(R6.5.31まで)【医療区分⑬】中心静脈栄養を実施している状態
【医療区分⑬】中心静脈栄養を実施している状態の概要
医療区分 | 算定期間 |
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医療区分3 | 算定期間に限りのない医療区分 ー |
項目の定義 |
中心静脈栄養を実施している状態 |
評価の単位 |
1日毎 |
留意点 |
本項目でいう中心静脈栄養とは、消化管の異常、悪性腫瘍等のため消化管からの栄養摂取が困難な場合に行うものに限るものとし、単に末梢血管確保が困難であるために行うものはこれに含まない。ただし、経管栄養のみでカロリー不足の場合については、離脱についての計画を作成し実施している場合に限り、経管栄養との一部併用の場合も該当するものとする。 なお、毎月末において、当該中心静脈栄養を必要とする状態に該当しているか確認を行い、その結果を診療録等に記載すること。 |
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≪算定期間に限りのある医療区分≫
- 医療区分①:24時間持続点滴
- 医療区分②:尿路感染症
- 医療区分③:リハビリテーション
- 医療区分④:脱水
- 医療区分⑤:消化管等からの出血
- 医療区分⑥:頻回の嘔吐
- 医療区分⑦:せん妄
- 医療区分⑧:経腸栄養
- 医療区分⑨:頻回の血糖検査
≪算定期間に限りのない医療区分≫
- 医療区分⑩:スモン
- 医療区分⑫:常時、監視・管理
- 医療区分⑬:中心静脈栄養
- 医療区分⑭:人工呼吸器
- 医療区分⑮:ドレーン法
- 医療区分⑯:気管切開・気管内挿管+発熱
- 医療区分⑰:酸素療法(高密度)
- 医療区分⑱:感染症の治療
- 医療区分⑲:筋ジストロフィー症
- 医療区分⑳:多発性硬化症
- 医療区分㉑:筋委縮性側索硬化症
- 医療区分㉒:パーキンソン病
- 医療区分㉓:その他の指定難病等
- 医療区分㉔:脊髄損傷
- 医療区分㉕:慢性閉塞性肺疾患
- 医療区分㉖:人工腎臓等
- 医療区分㉙:悪性腫瘍
- 医療区分㉚:肺炎
- 医療区分㉛:褥瘡
- 医療区分㉜:下肢末端の開放創
- 医療区分㉝:うつ症状
- 医療区分㉞:他者に対する暴行
- 医療区分㉟:喀痰吸引
- 医療区分㊱:気管切開・気管内挿管
- 医療区分㊲:創傷、皮膚潰瘍等
- 医療区分㊳:酸素療法
評価の要点(医療区分⑬:中心静脈栄養)
医療区分⑬の「中心静脈栄養を実施している状態」では、末梢血管の確保が困難で行うものは含まれないことに注意が必要です。
また、消化管からの栄養摂取が困難なことも併せて確認しておく必要があります。
算定期間に期限はないので、中心静脈栄養を実施している状態であるならばチェックをすることができます。
評価票に記入をするときの確認事項
医療区分・ADL区分等に係る評価票にチェックをするときには、下記の内容についてきちんとできているか確認しましょう!!
「中心静脈栄養を実施している状態」を定義に基づいて適切に分類している。
- 消化管からの栄養摂取が困難なために行う旨を診療録に記載している。
- 経管栄養のみではカロリー不足の場合、離脱についての計画を作成し実施している。
- 中心静脈栄養を漫然と実施せず、経管栄養への移行や経口摂取への復帰が検討されている。
- 定期的に血液検査等、必要な検査を実施している。
※「中心静脈栄養」とは、消化管の異常、悪性腫瘍等のため消化管からの栄養摂取が困難な場合に行うものに限る。単に、末梢血管確保が困難であるために行うものは含まない。
※経管栄養のみでカロリー不足の場合については、離脱についての計画を作成し実施している場合に限り、経管栄養との一部併用の場合も該当する。
※評価の単位は1日毎とする。
Q&A(医療区分⑬:中心静脈栄養)
以前、当サイトへのあった質問とその回答です。
イレウスの発症患者について[H29.4.4]
「13.中心静脈栄養を実施している状態」について、イレウスを度々発症される患者様に対して、中心静脈栄養を行っていますが、本区分に該当するでしょうか?
イレウスを度々発症されるということでしたが、「イレウス」は消化管の異常の一つと考えられます。
そのことを原因として、消化管からの栄養摂取が困難な場合、中心静脈栄養の適用も考慮されるため、「イレウスを発症していて消化管からの栄養摂取が困難であり中心静脈栄養をしている」のであれば本項目に該当するかと考えられます。
腸閉塞(イレウス)とは、腸の内容物が通過障害を来した状態のことをいいます。
腸管の途中で通過障害を起こしてしまうため、通過障害を起こしている閉塞部より肛門側に、ガスや便が流れることができなくなります。
そのため、閉塞部より口側にガスや便が貯留し、腸管内圧が上昇します。
腸管内圧が上昇すると、腸管からの水分や栄養、ガスなどの吸収障害が起き、さらに腸管内圧が上昇していきます。
- 絶飲食:腸管内圧の上昇を防ぐために、絶飲食にする。
- 輸液:脱水を引き起こしやすいので、輸液を行い水分と電解質の補充を行う。
- ドレナージによる腸管の減圧:胃管やイレウス管を使用し、腸管内の内容物を持続的に吸引する。吸引することによって腸管内の減圧を行う。
- 手術治療:手術により閉塞を解除する。
嚥下障害はあてはまるか?[H29.3.8]
「13.中心静脈栄養を実施している状態」について、留意点にある「消化管の異常」に ”嚥下障害” はあてはまりますか?
「消化管」と「嚥下障害」についてですが、
- 消化管 ⇒ 口から肛門までの食物の通路
- 嚥下障害 ⇒ 食べ物を飲み込む動作の異常
嚥下障害は、食べ物を飲み込む動作の異常であり、主に咽頭部分の異常で起こります。
咽頭は、消化管の一つなので、嚥下障害は消化管の異常にあてはまると考えられます。
ただし、嚥下障害ですぐに中心静脈栄養の適応というわけではなく、マーゲンチューブや胃瘻による経管栄養の適応も考慮しなければならないと思われます。
消化管とは、口から肛門までの食物の通路のことを言います。
口から肛門までの途中にある臓器は
- 口腔
- 咽頭
- 食道
- 胃
- 十二指腸
- 空腸
- 回腸
- 盲腸
- 虫垂
- 上行結腸
- 横行結腸
- 下行結腸
- S状結腸
- 直腸
- 肛門
になり、これらが消化管になります。
嚥下は、①口腔期 ②咽頭期 ③食道期 にわけられます。
- 口腔期・・・舌により食べ物を口腔から咽頭へ送る
- 咽頭期・・・嚥下反射により食べ物を食道に送る
- 食道期・・・食道の蠕動(ぜんどう)運動により胃まで食べ物を運ぶ
脳血管障害などによって ”嚥下障害” が起こると、嚥下をうまくできなくなり、食べ物が飲み込みにくくなったり(嚥下困難)食べ物をのどに引っ掛けたり(誤嚥)します。
経口摂取と中心静脈栄養の併用について[H29.3.2]
「13.中心静脈栄養を実施している状態」について、経口摂取と中心静脈栄養の併用も離脱についての計画を作成していれば本項目に該当するでしょうか?
留意点について、本項目に該当する要件に以下のことがあげられています。
- 消化管の異常、悪性腫瘍等により消化管からの栄養摂取が困難な場合。※末梢血管確保が困難であるだけでは非該当
- 経管栄養のみでカロリー不足の場合での中心静脈栄養の実施。※離脱についての計画を作成し実施
よって、本項目に該当するためには
「消化管の異常、悪性腫瘍等を原因として、消化管からの栄養摂取が困難であり中心静脈栄養を行わなければならない場合」
「経管栄養において消化管からの栄養摂取が可能であるが、必要なカロリーが不足しているため中心静脈栄養を行わなければならない場合」
でなければなりません。
ご質問は、 ”経口摂取と中心静脈栄養の併用” とありますが、経管栄養ではなく経口摂取のため、「②の経管栄養のみでカロリー不足の場合で中心静脈栄養を実施している」に当てはめてしまうと、経口摂取なので非該当になるかと思われます。
そのため、「①の消化管の異常、悪性腫瘍等により栄養摂取が困難な状態かどうか」に当てはまるかを考えなければならないかと思われます。
その患者様が、消化管の異常や悪性腫瘍等により、経口摂取が可能でも食物の通過障害などが起こり、疾病を悪化させたり、治療を遅延させたりしてしまう場合には、IVHの適応になることもあるため、そのような理由で、患者様にIVHの必要性があれば本項目に該当するのではないかと考えられます。
離脱についての計画書の参考書式[H29.3.1]
「13.中心静脈栄養を実施している状態」について、中心静脈栄養の離脱についての計画書の参考書式はないでしょうか?
留意点において、
「ただし、経管栄養のみでカロリー不足の場合については、離脱についての計画を作成し実施している場合に限り、経管栄養との一部併用の場合も該当するものとする。」
とあります。
この一文の解釈についてですが、
- 経管栄養のみではカロリー不足である。
- 「①」を理由に、経管栄養と中心静脈栄養を併用している。
- 中心静脈栄養を離脱する時期等の計画を作成し実施している。
となり、①~③を満たす必要があります。
「中心静脈栄養を離脱についての計画書」ということでしたが、留意点には ”計画の作成” とはありますが、 ”計画書の作成” とは書かれていないので、離脱に向けての計画を診療録に記載するのみで構わないかと考えられます。
計画については、中心静脈栄養を離脱する時期や離脱に向けての計画になるかと考えられます。