区分の概要

「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の具体的な評価項目

クワホピ

医療療養病床では、入院されている患者様の状態を『医療区分・ADL区分等に係る評価票』を用いて評価しています。

評価票には「評価の手引き」が定められており、医療区分とADL区分をどのように評価するのかがまとめられています。

この記事では、医療区分・ADL区分によって患者様をどのように評価しているのかを解説していきます。

この記事で学ぶこと
  • 医療区分1~3への該当
  • 医療区分の評価の手引き
  • ADL区分1~3への該当
  • ADL区分の評価方法

「医療区分・ADL区分等に係る評価票」については、医科点数表の解釈(令和2年4月版)p942~943にありますのでご参照ください。

「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の評価項目についてしっかり理解しましょう。

医療区分の評価

医療療養病床に入院する患者様は、「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いて毎日評価を行い、患者の状態像に応じて該当するものすべてについて評価票にチェックすることになっています。

医療区分の評価項目

医療区分の評価項目は診療報酬改定によって少しずつ改定されています。

医科点数表の解釈(令和2年4月版)では、以下の項目について医療区分の評価を行うことと定義されています。

【算定期間に限りがある区分】

  • 医療区分3
    • [1]24時間持続して点滴をしている状態
  • 医療区分2
    • [2]尿路感染症に対する治療を実施している状態
    • [3]傷病等によりリハビリテーションが必要な状態
    • [4]脱水に対する治療を実施している状態、かつ、発熱を伴う状態
    • [5]消化管等の体内からの出血が反復継続している状態 
    • [6]頻回の嘔吐に対する治療を実施している状態、かつ、発熱を伴う状態
    • [7]せん妄に対する治療を実施している状態
    • [8]経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養が行われており、かつ、発熱又は嘔吐を伴う状態
    • [9]頻回の血糖検査を実施している状態

【算定期間に限りがない区分】

  • 医療区分3
    • [10]スモン
    • [11]欠番
    • [12]医師及び看護職員により、常時、監視及び管理を実施している状態
    • [13]中心静脈栄養を実施している状態
    • [14]人工呼吸器を使用している状態
    • [15]ドレーン法又は胸腔若しくは腹腔の洗浄を実施している状態
    • [16]気管切開又は気管内挿管が行われており、かつ、発熱を伴う状態
    • [17]酸素療法を実施している状態(密度の高い治療を要する状態に限る。)
    • [18]感染症の治療の必要性から隔離室での管理を実施している状態
  • 医療区分2
    • [19]筋ジストロフィー症
    • [20]多発性硬化症
    • [21]筋委縮性側索硬化症
    • [22]パーキンソン病関連疾患
    • [23]その他の難病
    • [24]脊髄損傷
    • [25]慢性閉塞性肺疾患
    • [26]人工腎臓、持続緩徐式血液濾過、腹膜潅流又は血漿交換療法を実施している状態
    • [27]欠番
    • [28]省略
    • [29]悪性腫瘍
    • [30]肺炎に対する治療を実施している状態
    • [31]褥瘡に対する治療を実施している状態
    • [32]末梢循環障害による下肢末端の開放創に対する治療を実施している状態
    • [33]うつ症状に対する治療を実施している状態
    • [34]他社に対する暴行が毎日認められる状態
    • [35]1日8回以上の喀痰吸引を実施している状態
    • [36]気管切開又は気管内挿管が行われている状態
    • [37]創傷、皮膚潰瘍又は下腿若しくは足部の蜂巣炎、膿等の感染症に対する治療を実施している状態
    • [38]酸素療法を実施している状態(密度の高い治療を要する状態を除く。)

医療区分の評価は、患者様の病状が定められた項目に当てはまるかどうかをチェックしていきます。

合わせて読みたい
医療区分・ADL区分の手引き
医療区分・ADL区分の手引き

それぞれの医療区分における「評価の手引き」

患者様の医療区分の評価は「評価の手引き」が定められており、患者様の病態が当てはまるものがないかのチェックを行います。

「評価の手引き」には、医療区分それぞれの項目ごとに「項目の定義・評価の単位・留意点」の記載があるので、それに当てはまるかをチェックします。

医療区分の「評価の手引き」
  • 項目の定義
  • 評価の単位
  • 留意点

実際に、医療区分①の「24時間持続点滴」を参考に、どのように記載されているかを確認してみましょう。

「医療区分①:24時間持続して点滴をしている状態」の評価の手引き

「医療区分①:24時間持続して点滴をしている状態」の評価の手引きは、以下のようになっています。

「医療区分①:24時間持続して点滴をしている状態」の評価の手引き

医療区分
算定期間最大7日間
項目の定義
24時間持続して点滴を実施している状態
評価の単位
1日毎
留意点
本項目でいう24時間持続して点滴を実施している状態とは、経口摂取が困難な場合、循環動態が不安定な場合又は電解質異常が認められるなど体液の不均衡が認められる場合に限るものとする。(初日を含む。)
また、連続した7日間を超えて24時間持続して点滴を行った場合は、8日目以降は該当しないものとする。ただし、一旦非該当となった後、再び病状が悪化した場合には、本項目に該当する。

評価の手引きを確認すると、「患者様が経口摂取が困難な場合、循環動態が不安定な場合又は電解質異常が認められるなど、体液の不均衡が認められる場合に24時間持続して点滴をしているときには、医療区分3に該当する」となっています。

また、最大7日間となっているので8日目以降は一旦非該当にならないと、医療区分3から外れてしまうことも確認できます。

「評価の手引き」をしっかり理解していないと、患者様の評価を間違ってしまうことになるので注意が必要です。

医療区分1~3の該当の重複について

患者様の病態によっては、複数の医療区分に当てはまることもあり、医療区分が重複してしまうことがあります。

そのような場合は、評価票には当てはまる項目すべてにチェックを行い、医療区分は一番重症度の高いもので入院基本料の算定を行います。

仮に、医療区分2と医療区分3に該当する場合には、医療区分3で入院基本料の算定を行うことになります。

患者様の評価算定区分
「医療区分2・3」、どちらにも当てはまらない「医療区分1」で算定
「医療区分2」にだけ当てはまる「医療区分2」で算定
「医療区分3」にだけ当てはまる「医療区分3」で算定
「医療区分2・3」、どちらにも当てはまる「医療区分3」で算定

複数の医療区分に当てはまるときには、入院基本料が高くなる区分で算定を行います。

医療区分3だからといって他の評価が不要なわけではない

医療区分が重複した場合には入院基本料が高くなる区分で算定を行います。

仮に、評価票の医療区分2と医療区分3のどちらもチェックがあった場合には、医療区分3で算定することになります。

その場合、どうせ医療区分3で算定するならば、医療区分2のチェックは必要ないかと考えられる方もいるかもしれませんが、そのようなことはありません。

入院されている患者様の病態の評価は、医療区分が重複していてもすべて行う必要があります。

医療区分3であったとしても、医療区分2の評価もしっかり行いましょう。

『医療区分・ADL区分等に係る評価票』は、評価したあとに患者様に渡さなければいけません。しっかり評価を行いましょう。

合わせて読みたい
入院基本料A~Fの患者に対しての「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の交付(R2年4月版)
入院基本料A~Fの患者に対しての「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の交付(R2年4月版)

ADL区分の評価

ADL区分は、定められた4つの項目「a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用」について、介護の支援のレベルを6段階で評価し、その合計点数でADL区分が決定するようになっています。

ADL区分で評価する4つの項目

ADL区分は、定められた4つの項目「a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用」について評価を行います。

評価は患者様に対する支援のレベルを6段階で評価し、4項目それぞれに0~6点の点数をつけ、それを合計します。

それぞれの項目についての内容は以下の表の通りです。

項目内容
a.ベッド上の可動性横になった状態からどのように体を動かすか
寝返り起き上がりなどのベッド上の身体の位置調整
b.移乗ベッドからどのようにイスや車イスに座ったり立ち上がるか
c.食事どのように食べたり飲んだりするか
d.トイレの使用どのようにトイレを使用するか
排泄後の始末、おむつの替え、衣服を整えることなど

ADL区分の評価項目は、ベッド上での身体の動きやベッドからの移乗、食事面での動き、トイレの使用についてになります。

4つの項目に対しての「0~6点」の評価

ADL区分は、「a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用」の4つの項目を評価し、0~6点の点数をつけていきます。

この点数は患者様の自立度によって変わり下の表のようになります。

点数自立度概要
0点自立手助け・準備・観察が不要、または1~2回のみ
1点準備のみ物や用具を患者の手の届く範囲に置くことが3回以上
2点観察見守り・励まし・誘導が3回以上
3点部分的な援助動作の大部分(50%以上)は自分でできる
四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支えない援助を3回以上
4点広範な援助動作の大部分(50%以上)は自分でできるが、体重を支える援助(例.四肢や体幹の重みを支える)を3回以上
5点最大の援助動作の一部(50%未満)しか自分でできず、体重を支える援助を3回以上
6点全面依存まる3日間すべての面で他者が全面援助した(及び本動作は一度もなかった場合)

仮に、寝たきりで常に全介助である患者様であった場合には、「a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用」の全ての項目において、6点になるので、合計24点ということになります。

a.ベッド上の可動性6点
b.移乗6点
c.食事6点
d.トイレの使用6点
合計24点

介護必要度が高くなるほど点数は高くなり、ADL区分も高くなります。

ADL区分1~3の分類について

前項で説明した通り、定められた4つの項目「a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用」について評価を行い、それぞれの項目ごとに「0~6点」の点数がつけられ、その合計点が計算されます。

a.ベッド上の可動性0~6点
b.移乗0~6点
c.食事0~6点
d.トイレの使用0~6点
合計0~24点

ADL区分1~3の分類は評価の合計点数によって分類され、介護の必要度が高くなるにつれてADL区分も高くなります。

ADL区分1ADL区分2ADL区分3
介護の必要度(点)0~1011~2223~24
患者様の状態寝たきり
合わせて読みたい
「医療区分・ADL区分等に係る評価票」における『ADL区分の評価』
「医療区分・ADL区分等に係る評価票」における『ADL区分の評価』

「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の具体的な評価項目|まとめ

「医療区分・ADL区分等に係る評価票」は、患者様の医療区分・ADL区分を評価するために用いられ、医療区分・ADL区分ともに”評価の手引き”に定められた方法で評価を行うようになっています。

評価の手引きに定められた通りに行えば、医療区分1~3・ADL区分1~3をきちんと評価することができるので、評価の手引きをしっかり確認しておくことが大切です。

記事URLをコピーしました