施設基準

療養病棟入院基本料の施設基準等(通則)の解釈

クワホピ

療養病棟入院基本料を届け出る際に満たすべき施設基準は、医科点数表の解釈において以下の項目について定められています。

  1. 看護職員数の規定
  2. 看護職員の最小必要数
  3. 看護補助者数の規定
  4. 褥瘡に関する規定
  5. 医療区分・ADL区分の評価と記録
  6. 適切な意思決定支援に関する指針
  7. 中心静脈注射用カテーテルに関する規定
  8. データ提出加算に係る届出

それぞれの項目にどのようなことが定められているかをしっかり確認しておきましょう。

療養病棟入院基本料の施設基準等(通則)

通則①:看護職員数の規定

当該病棟において、1日に看護を行う看護職員の数は、常時、当該病棟の入院患者の数が20又はその端数を増すごとに1以上であること。ただし、当該病棟において、1日に看護を行う看護職員の数が本文に規定する数に相当する数以上である場合には、各病棟における夜勤を行う看護職員の数は、本文の規定にかかわらず、1以上であることとする。

療養病棟入院基本料の施設基準における看護職員の数は、入院患者数20人に対して1人以上が必要になり、この20人の患者数に対して1人の看護職員が必要な状態を「20:1」として表します。

「20:1」は単純に患者数と看護職員数の比率で計算するものではなく、看護職員の勤務時間数で計算する必要があるので注意が必要です。また、夜勤は必ず1人以上の看護職員が行う必要があります。

病床数20のときの必要看護職員数

病床数20の医療療養病床の場合、20人の患者が入院することになります。療養病棟入院基本料の施設基準では20人に対して1人の看護職員の配置となっているので、これに当てはめて看護職員数を計算してみると

患者数÷看護職員の配置 ⇨ 20÷20=1

となり、計算結果では1人の看護職員数で大丈夫なことになります。でも、この計算は大間違いです。これだと、看護職員は病棟で休みなく働き続けないといけなくなってしまいます。

では、どのような計算になるのか???

看護職員数の計算では看護師が1日に8時間勤務することとして計算します。すると1日は24時間なので「24÷8=3」となり、1日に3人の看護師は最低必要という計算になります。このことを踏まえて先ほどの計算をもう一度やり直すと、

(患者数÷看護職員の配置)×1日に必要な看護師数 ⇨ (20÷20)×3=3

となり、病床数20の医療療養病床の場合には最低でも3人の看護職員が必要ということになります。この計算結果ででた看護職員数はあくまでも最低人員であり、職員の公休や有休などを考慮すると実際の必要人数は増えることになります。

通則②:看護職員の最小必要数

当該病棟において、看護職員の最小必要数の2割以上が看護師であること。

看護職員の資格には”看護師”と”准看護師”の2つがありますが、療養病棟入院基本料の施設基準においては、その療養病棟に必要な看護職員の勤務時間数に対して看護師の勤務時間数が2割以上である必要があります。

ここでの看護師の割合は、その病棟に勤務する看護師の人数の割合ではなく、勤務時間数で割合の計算をしなくてはいけません。また、このときの勤務時間数の合計はその病棟に必要な看護師の時間数で計算する必要があります。

病床数40のときの看護師比率

病床数40のときの看護師比率を計算し、正看護師が何人必要かを考えてみます。

①病棟に必要な看護職員の数

まずは、病棟に必要な看護職員の数を計算すると、病床数40の病棟に必要な看護配置数は6人であることが分かります。

(患者数÷看護職員の配置)×1日に必要な看護師数 ⇨ (40÷20)×3=6人

②病棟に必要な看護職員の総勤務時間数

つぎに、病棟に必要な看護職員の総勤務時間数を計算すると、病床数40の病棟に必要な看護職員の総勤務時間数は1440時間であることが分かります。

8(hr)×月日数×必要な看護配置数 ⇨ 8×30×6=1440時間

③病棟に必要な正看護師の人数

”看護職員の最小必要数の2割以上が看護師”とあるので、1440時間の20%以上の時間を正看護師が勤務していないといけないことになります。

1440×0.2=288時間

つまり、正看護師が288時間勤務している必要があります。

1日8時間勤務で週休2日だとすると22日勤務することになるので、「22×8=176時間」で1名の正看護師で約176時間の勤務時間になります。これを参考に、病床数40の正看護師の人数と看護師比率の関係を表にすると下の表のようになります。

勤務時間数正看1人正看2人正看3人
1440時間176時間352時間528時間
12%24%36%

つまり、最低でも2人以上の正看護師が必要ということになります。

通則③:看護補助者数の規定

当該病棟において、1日に看護補助を行う看護補助者の数は、常時、当該病棟の入院患者の数が20又はその端数を増すごとに1に相当する数以上であることとする。なお、主として事務的業務を行う看護補助者を含む場合は、1日に事務的業務を行う看護補助者の数は、常時、当該病棟の入院患者の数が200又はその端数を増すごとに1に相当する数以下であること。

療養病床における看護補助者の数は、入院患者数20人に対して1人以上が必要になります。この20人の患者数に対して1人の看護補助者が必要な状態を「20:1」といいます。「20:1」は人数での比率ではなく、看護補助者の勤務時間数で計算する必要があるので注意が必要です。また、事務的業務を行う看護補助者がいる場合には、入院患者の数200人に対して1人以下の状態である必要があります。

看護補助者の計算方法も「看護職員の規定」で説明した計算方法と同じになります。

通則④:褥瘡に関する規定

当該病棟に入院している患者に係る褥瘡の発生割合等について継続的に測定を行い、その結果に基づき評価を行っていること。

療養病棟入院基本料の施設基準においては、入院患者に対して褥瘡の発生割合などについて継続的な測定が必要になります。また、その結果に基づいて褥瘡の評価を行う必要があります。

通則⑤:医療区分・ADL区分の評価・記録

当該病棟の入院患者に関する(2)の区分に係る疾患及び状態等並びにADLの判定基準による判定結果について、記録していること。

※(2):療養病棟の入院料に関する規定

療養病棟入院基本料の施設基準では、入院している患者について医療区分・ADL区分の評価を行い、入院料を決定するように定められています。医療区分・ADL区分の評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票」を用いて日々の患者の状態の評価を行います。

合わせて読みたい
「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の具体的な評価項目
「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の具体的な評価項目

通則⑥:適切な意思決定支援に関する指針

当該保険医療機関において、適切な意思決定支援に関する指針を定めていること。

人生の最終段階を迎える患者が、その人らしい最期を迎えられるように指針を作り、多職種にて構成される医療・ケアチームで対応するように定められています。現在では、施設基準の届け出に際して作成した指針の提出は求められておらず、「適切な意思決定支援に関する指針を保険医療機関として定めている」かの確認だけ行われています。

通則⑦:中心静脈注射用カテーテルに関する規定

中心静脈注射用カテーテルに係る感染を防止するにつき十分な体制が整備されていること。

中心静脈注射用カテーテルに対しての感染防止に関する指針を作るように定められています。現在では、施設基準の届け出に際して作成した指針の提出は求められておらず、「中心静脈注射用カテーテルに係る院内感染対策のための指針を保険医療機関として定めている」かの確認だけ行われています。

通則⑧:データ提出加算に係る届出

データ提出加算に係る届出を行っている保険医療機関であること。

データ提出加算に係る届出を行っている保険医療機関とありますが、療養病床において「A245データ提出加算」に関する施設基準を満たすことができない場合があり、その正当な理由があるものに限り、当分の間、該当するものとみなされています。

A245 データ提出加算に関する施設基準
  • A207診療録管理体制加算に係る届出を行っている。
  • A207診療録管理体制加算に係る施設基準の要件を満たしている。
  • 「DPC導入の影響評価に関する調査」に適切に参加できる。
  • 適切なコーディングに関する委員会を設置し、年2回以上、当該委員会を開催すること。
A207 診療録管理体制加算の施設基準
  1. 診療録管理体制加算1
    • イ 患者に対し診療情報の提供が現に行われていること。
    • ロ 診療記録の全てが保管及び管理されていること。
    • ハ 診療記録管理を行うにつき十分な体制が整備されていること。
    • ニ 中央病歴管理室等、診療記録管理を行うにつき適切な施設及び設備を有していること。
    • ホ 入院患者について疾病統計及び退院時要約が適切に作成されていること。
  2. 診療録管理体制加算2
    • イ ①のイ、ロ及びニを満たすものであること。
    • ロ 診療記録管理を行うにつき必要な体制が整備されていること。
    • ハ 入院患者について疾病統計及び退院時要約が作成されていること。

データ提出加算の届出を行うことが困難であることの正当な理由について

令和2年3月31日において現に次の①から③までに掲げる規定に係る届出を行っている病棟について、

  • 急性期一般入院基本料
  • 特定機能病院入院基本料(一般病棟に限る。)
  • 専門病院入院基本料(13対1入院基本料を除く。)
  • 回復期リハビリテーション病棟入院料1から4まで

又は

地域包括ケア病棟入院料を算定する若しくは地域包括ケア入院医療管理料を算定する病室のいずれも有しない保険医療機関であって、

  • 療養病棟入院料1、2を算定する病棟
  • 療養病棟入院基本料注11に係る届出を行っている病棟
  • 回復期リハビリテーション病棟入院料5、6を算定する病棟

のいずれかを有するもののうち、

これらの病棟の病床数の合計が当該保険医療機関において200床未満であり、かつ、データ提出加算の届出を行うことが困難であることについて正当な理由があるものに限り、当分の間、次の①から③までに掲げる区分に応じ、当該各①から③までに定めるものに該当するものとみなす。

  1. 療養病棟入院基本料 第五の三の(1)のイの⑧
  2. 回復期リハビリテーション病棟入院料5 第九の十の(6)のロ
  3. 回復期リハビリテーション病棟入院料6 第九の十の(7)
データ提出加算の届出を行うことが困難であることについて正当な理由があるもの

正当な事由がある場合とは、

  • 電子カルテシステムを導入していない場合
  • 「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に規定する物理的安全対策や技術的安全対策を講ずることが困難である場合

などが挙げられる。

療養病棟入院基本料 第五の三の(1)のイの⑧

データ提出加算に係る届出を行っている保険医療機関であること。

療養病棟入院基本料の施設基準等(通則) |まとめ

どの病床群についてもですが、施設基準が細かく設定されておりその施設基準を満たすことによって入院基本料を算定することができます。

療養病棟入院基本料においてもそのことに変わりはありません。

だからといって難しい取り決めがあるわけではなく、入院されている患者様への医療の提供がしっかりなされるように決められたものなので、きちんと満たすことができる施設基準になっています。

書類を作成するだけで施設基準を満たしてしまうものもありますが、その書類を作成することで患者様へどのような医療サービスを提供することになるのかも考えながら施設基準への対応を行っていきましょう。

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