尿検査|検査の基準値
尿検査は、尿(おしっこ)を検体として行う検査です。
患者から得られる検査材料(検体)の中でも、尿は最も簡単かつ大量に採取することができる検体です。
また、尿の成分は血液成分をある程度反映するので、腎疾患以外の疾患のスクリーニング検査として応用することができます。
尿の生成と排泄
尿は腎臓で作られ、尿管・膀胱・尿道を経て排泄されます。
この尿の生成から排泄までに関わる「腎臓・尿管・膀胱・尿道」を一括して、泌尿器と呼びます。
また、この中で「尿管・膀胱・尿道」は尿路と呼ばれます。
腎臓には循環血液の約20%が流れています。
腎臓の糸球体では、1日に150~180Lの血液が濾過され、濾過されたものが原尿となります。
原尿は、近位尿細管から遠位尿細管を経て集合管に至る間に、有用な物質の再吸収や、不要あるいは過剰な物質の分泌が行われ、最終的に尿として1日に1,000~1,500mLが排泄されます。
尿の生成過程
※腎小体と尿細管はネフロンと呼ばれます。
輸入細動脈
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糸球体
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(一部が輸出細動脈へ)
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ボウマン嚢
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近位尿細管
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(一部が再吸収される)
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ヘンレ係蹄
(一部が再吸収される)
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遠位尿細管
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集合管
尿検査で分かること
尿検査では以下の疾患を把握することができます。
- 腎疾患
・腎炎(糸球体腎炎、腎盂腎炎)
・ネフローゼ症候群
・腎不全
・腎腫瘍→尿細胞診 - 尿路系の腫瘍→尿細胞診
・腎盂癌
・尿管癌
・膀胱癌 - 代謝障害
・糖尿病、その他 - 肝機能障害
・黄疸など - その他、各臓器あるいは全身状態を反映するもの
・心不全状態
・酸塩基平衡
・出血性素因、凝固異常
・異常蛋白の出現(ベンス・ジョーンズ蛋白)
尿検査のおもな検査項目
尿検査にはおもに以下のような検査があります。
尿検査の採尿法
尿検査の採尿法は、特別な器具を用いずに自然に排泄された尿を採取する自然尿と、自然な排尿が困難な場合や微生物学的検査を目的として行われるカテーテル尿、膀胱穿刺があります。
自然尿には以下の4種類があります。
中間尿
排泄されたはじめの尿や、最後の尿ではなく、排泄途中の尿を用いるものです。
外尿道や膣由来の成分の混入を防ぐために一般的に用いられる尿です。
尿の細菌検査を行う場合は、局所の清拭を行った後に中間尿の採取を行うと汚染の影響を防ぐことができます。
全尿
蓄尿法により、排泄されたすべての尿を用いるものです。
初尿
排泄された最初の尿を用いる方法で、淋菌、クラミジアなどの検出に有効です。
分杯尿
排尿時に、前半と後半に分けて2つのコップに尿を採取する方法です。
尿路内における出血や炎症部位の推定に有効です。
採尿時間
採尿時間には、早朝尿・随時尿・24時間畜尿の3種類があります。
早朝尿(起床時尿)
早朝尿は、就寝前に排尿し、朝起床時に採取した尿です。
尿中成分の多い濃縮された尿を得ることができます。
入院患者や学童集団検診で用いられます。
随時尿
随時尿は、任意の時間に採取した尿で、病院受診時に外来で採取される尿の多くがこれにあたります。
早朝尿に比べると希釈されている場合が多く、尿中の成分はそれだけ少ないものになりますが、患者に時間的制限がなく、また新鮮な尿を検査することができます。
24時間蓄尿
24時間畜尿は、昼夜や食事の影響を受ける成分の尿中排出量を正確に測定するために用いられます。
蓄尿の方法は、まず排尿し、これを捨て、この時間から24時間以内に排泄した尿をすべて蓄尿容器に貯めておきます。
24時間後には、尿意がなくても採取し、これを含めて24時間尿とします。