心筋マーカー|検査の基準値
H-FABP: 陰性(簡易測定キット)
Trop I: 0.5ng/mL未満(蛍光酵素免疫測定法)
Trop T: 陰性(簡易測定キット)、0.10ng/mL以下(ECLIA法)
心筋マーカーの定義
心筋マーカー
心臓由来脂肪酸結合蛋白、心筋トロポニン
心筋梗塞により心筋細胞が障害を受けると以下のものが放出されるので、これらを心筋マーカーとして測定します。
- 心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)
- 心筋トロポニン(Trop I、Trop T)
- ミオグロビン(Mb)
- クレアチンキナーゼエンザイムMB(CK-MB)ミオシン軽鎖
各心筋マーカーの出現性は、心筋障害の経時的変化や心筋特異性によって異なります。
急性心筋梗塞における各種心筋障害マーカーの変動
急性心筋梗塞の発症時においては、心筋マーカーは以下の表のような変動をします。
項目 | 上昇出現時間 | ピーク時間 | 上昇持続日数 |
---|---|---|---|
CPK | 3.0 ~ 5.0 | 12 ~ 24 | 3.0 ~ 5.0 |
CK-MB | 3.0 ~ 5.0 | 12 ~ 24 | 3.0 ~ 5.0 |
AST | 4.0 ~ 6.0 | 12 ~ 30 | 3.0 ~ 5.0 |
LDH | 6.0 ~ 10.0 | 24 ~ 60 | 6.0 ~ 15.0 |
ミオグロビン | 0.5 ~ 3.0 | 6 ~ 10 | 0.5 ~ 3.0 |
H-FABP | 0.5 ~ 3.0 | 0.5 ~ 10 | 0.5 ~ 3.0 |
トロポニン | 3.0 ~ 10.0 | 12 ~ 18 | 7.0 ~ 20.0 |
心筋マーカーの異常とその原因
① 心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)
心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)の定義
心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)は、骨格筋や心筋細胞室に存在する小分子蛋白で、心筋に比較的豊富に存在します。
そのため、心筋と骨格筋に同等に分布するミオグロビンに比べて、心筋に対する特異性が高いです。
心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)は、心筋虚血によって心筋細胞が障害されるとすみやかに循環血中に逸脱されるため、ミオグロビンと同等に鋭敏な遊出動態を示します(発症1~1.5時間以内に血中濃度が上昇)。
- 骨格筋や心筋細胞質に存在する小分子蛋白
- 心筋に比較的豊富に存在
- ミオグロビン(心筋と骨格筋に同等に分布)に比べ、心筋特異性が高い。
- 心筋虚血により、心筋細胞が障害されると速やかに循環血中に逸脱(発症1~1.5時間以内に血中濃度上昇)
心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)が陽性の場合
心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)が陽性の場合には、以下のことが考えられます。
- 急性心筋梗塞(AMI)
・不安定狭心症(UAP)で陽性を示す可能性がある。
② 心筋トロポニン(Trop I、Trop T)
心筋トロポニン(Trop I、Trop T)の定義
トロポニンは、トロポニンⅠ(Trop I)・トロポニンT(Trop T)・トロポニンCの複合体として横紋筋フィラメント上に存在し、筋収縮の調整に関与している蛋白です。
トロポニンは平滑筋には存在せず、構造が心筋と骨格筋で異なるため、心筋トロポニンは現在、もっとも特異的な心筋マーカーと考えられています。
心筋梗塞発症早期(発症から3~6時間後)から2~3週後まで有意の上昇が持続し、心筋の壊死を最も特異的に、しかも長期に検出できる特徴があります。
- トロポニンI(Trop I)、トロポニンT(Trop T)、トロポニンCの複合体として存在
- 横紋筋フィラメント上に存在し、筋収縮の調整に関与している蛋白
- 平滑筋には存在しない
- 心筋梗塞発症早期(発症から3~6時間後)から2~3週後まで上昇が持続(心筋の壊死を最も特異的に、しかも長期に検出できる)
心筋トロポニン(Trop I、Trop T)が陽性の場合
心筋トロポニン(Trop I、Trop T)が陽性の場合には、以下のことが考えられます。
- 急性心筋梗塞(AMI)
・不安定狭心症(UAP)、心臓移植後の拒絶反応、心筋炎などで陽性を示す可能性がある。