MMP-3(マトリックスメタロプロテアーゼ-3)|検査の基準値
MMP-3(マトリックスメタロプロテアーゼ-3)の概要
MMP-3は「Matrix Metalloproteinase-3」を略したもので、「マトリックスメタロプロテアーゼ-3」と読みます。
MMP-3は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)と呼ばれる酵素群のひとつであり、ストロムリシン-1(Stromelysin-1)とも呼ばれます。
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)は、細胞外マトリックス(ECM)の分解に関与する亜鉛依存性のプロテアーゼで、組織のリモデリングや修復に重要な役割を果たしています。
とくに、関節リウマチ(RA)患者の関節液や血清中には、高濃度のMMP-3が認められ、早期からの滑膜増殖を反映するために、発症1年以内の早期RAでも高値を示します。
そのため、MMP-3は関節リウマチの発症に大きな関連があるとされています。
また、MMP-3はリウマチ因子などの自己免疫検査やCRPなどの炎症マーカーと比べると、実際の関節破壊の程度を反映するため、病勢の把握や治療効果の判定に有用です。
MMP-3の主な機能
① 細胞外マトリックス(ECM)分解
MMP-3は、以下のような細胞外マトリックス成分を分解する能力を持ちます。
- プロテオグリカン
- フィブロネクチン
- ラミニン
- エラスチン
- コラーゲン(とくにIV型、IX型、X型)
また、MMP-3は、他のMMPs(MMP-1、MMP-7、MMP-9など)の活性化を促すことで、さらなるECM分解を加速させる働きもあります。
② 組織リモデリング
- 創傷治癒
:損傷部位の細胞外マトリックスを分解し、新しい組織の形成を促進 - 軟骨や骨のリモデリング
:骨・軟骨の代謝調節に関与 - 血管新生(angiogenesis)
:新しい血管の形成を助ける
③ 炎症と疾患との関連
MMP-3は、炎症反応の調節にも重要な役割を果たし、いくつかの疾患と関連しています。
MMP-3と疾患
① 関節リウマチ(RA)
関節リウマチ(RA)では、滑膜細胞やマクロファージが過剰にMMP-3を分泌することで、関節軟骨や骨を破壊します。
そのため、RAの活動性を反映するバイオマーカーとして臨床的に測定されることがあります。
また、MMP-3は早期から滑膜増殖を反映し、発症1年以内の早期RAでも高値を示します。
実際の関節破壊の程度を反映するため、病勢把握や治療効果の判定に有用です。
② 変形性関節症(OA)
MMP-3が過剰な活性化を起こすと、関節軟骨の破壊を促進し、変形性関節症の進行に寄与します。
③ 心血管疾患
MMP-3の異常な発現は、動脈硬化や大動脈瘤の発症に関与します。
そして、血管壁のリモデリングやプラークの不安定化を引き起こし、心血管イベントのリスクを高める可能性があります。
④ 癌
MMP-3は、癌の進行や転移にも関連します。
腫瘍細胞の浸潤や血管新生を促進することで、癌の悪性化に寄与します。
⑤ 肺線維症
MMP-3の異常な活性化が、線維化の進行に関与します。
MMP-3の基準値
MMP-3(マトリックスメタロプロテアーゼ-3)の基準値は、検査を実施する施設や測定方法によって異なりますが、一般的な基準値の目安は以下の通りです。
男性 | 36.9 ~ 121.0 ng/mL |
女性 | 17.3 ~ 59.7 ng/mL |
MMP-3が高値・低値となる場合
- 高値の場合
- 関節リウマチ(RA)
- 変形性関節症(OA)
- 膠原病(全身性エリテマトーデスなど)
- 肝疾患(肝硬変など)
- 動脈硬化
- 低値の場合
- とくに臨床的な意義は少ないとされていますが、極端に低い場合は病的状態の可能性も考慮されます。