LDL-コレステロール(LDL-C)|検査の基準値
LDL-コレステロール(LDL-C)の概要
LDL-C は、「 low density lipoprotein cholesterol」を略したものです。
LDL-コレステロールは、低比重リポタンパク(Low-Density Lipoprotein, LDL) によって運ばれるコレステロールのことを指し、一般的に「悪玉コレステロール」とも呼ばれ、過剰になると動脈硬化や心血管疾患のリスクを高めます。
これとは逆に、HDL-コレステロールは「善玉コレステロール」と呼ばれています。
肝臓で合成されたコレステロールは、LDLによって全身の細胞へ運ばれます。
このコレステロールは細胞膜やホルモンの材料となるため、適量であれば体に必要な成分です。
しかし、過剰になると血管壁に蓄積し、プラーク(脂肪の沈着物)を形成し、動脈硬化を引き起こします。
肝臓で合成されるリポ蛋白
肝臓で合成されるリポ蛋白には、比重の異なる4つのものがあります。
このうち、低比重リポ蛋白(LDL)に含まれるコレステロールが、「LDL-コレステロール」です。
比重による分類 | 中性脂肪量 | 蛋白量 |
---|---|---|
カイロミクロン | 多い | 少ない |
超低比重リポ蛋白 (VLDL) | ⇅ | ⇅ |
低比重リポ蛋白 (LDL) | ⇅ | ⇅ |
高比重リポ蛋白 (HDL) | 少ない | 多い |
LDL-コレステロールによるアテローム形成
LDL-コレステロールによるアテローム形成は、障害のない血管壁では起こりにくいです。
ただ、血圧や血糖値の上昇、喫煙、ストレスの関与によって血管壁に障害があると、アテローム形成に移行することが知られています。
LDL-コレステロールの基準値と目標値
LDL-コレステロールの基準値
分類 | LDL-C値(mg/dL) |
---|---|
正常(適正範囲) | 60~119 |
境界域 | 120~139 |
高値 | 140~159 |
非常に高値 | 160以上 |
LDL-コレステロールは、以下の計算式で計算されます。
LDL-コレステロール = 総コレステロール - HDL-コレステロール - 中性脂肪 × 0.2
LDL-コレステロールの管理目標値
LDL-コレステロールの目標値は、個人のリスク(動脈硬化の危険性)によって異なります。
リスク分類 | LDL-C目標値(mg/dL) |
---|---|
低リスク(一般成人) | 140未満 |
中リスク(高血圧・喫煙など) | 120未満 |
高リスク(糖尿病・心血管疾患の既往あり) | 100未満 |
非常に高リスク(心筋梗塞の既往など) | 70未満 |
脂質異常症(高脂血症)の判定基準
総コレステロール値が高くなる原因として、HDL-コレステロール値が高いことも原因のひとつとして挙げられます。
最近の脂質異常症(高脂血症)の判定基準は以下のようになっています。
高LDL-コレステロール血症 | LDL-C値: 140mg/dL以上 |
低LDL-コレステロール血症 | LDL-C値: 40mg/dL未満 |
高中性脂肪血症 | 中性脂肪値: 150mg/dL以上 |
LDL-コレステロールが高い場合について
LDL-コレステロールが高い場合の疾患リスク
LDL-コレステロールが高い状態である高LDL血症では、以下の疾患のリスクを高めます。
① 動脈硬化(アテローム性動脈硬化)
- LDLが血管内に蓄積して動脈が狭くなる
- 血流が悪化して酸素や栄養の供給が低下する
② 心筋梗塞
- 冠動脈(心臓の血管)が詰まり心筋が壊死する
③ 脳梗塞
- 脳の血管が詰まり脳の組織が壊死する
④ 閉塞性動脈硬化症(PAD)
- 下肢の血流が悪くなり歩行時の痛みや壊疽を引き起こす
LDL-コレステロールが高くなる原因
① 食生活
- 飽和脂肪酸(肉の脂身、バター、ラード)やトランス脂肪酸(加工食品、マーガリン)の過剰摂取
- コレステロールを多く含む食品(レバー、卵黄、エビなど)の摂りすぎ
- 食物繊維の不足(食物繊維はコレステロールの排出を助ける)
② 運動不足
- 運動不足によって、LDL(悪玉コレステロール)が増加し、HDL(善玉コレステロール)が減少
③ 肥満
- とくに内臓脂肪が多いとLDLが増加しやすい
④ 遺伝(家族性高コレステロール血症)
- 遺伝的にLDL-Cが高くなりやすい体質の人もいる
⑤ その他の疾患や薬剤の影響
- 糖尿病、甲状腺機能低下症、腎臓病など
- 一部の薬(ステロイド、利尿薬など)が影響することも
LDL-コレステロールを下げる方法
① 食生活の改善
- 摂取を控えるべき食品
- 飽和脂肪酸(脂身の多い肉、バター、ラード)
- トランス脂肪酸(マーガリン、スナック菓子、インスタント食品)
- 過剰なコレステロール摂取(卵黄、レバー、エビ)
- 積極的に摂るべき食品
- 食物繊維(野菜、果物、海藻、全粒穀物)
- 不飽和脂肪酸(青魚、オリーブオイル、ナッツ)
- 大豆製品(豆腐、納豆、豆乳)
② 適度な運動
- 有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)を週150分以上
- 筋トレ(筋肉量を増やすことで代謝を向上)
③ 体重管理
- BMIが適正範囲(18.5~24.9)になるように調整
④ 禁煙・アルコールの適量摂取
- 喫煙はLDLを増やし、HDLを減少させる
- アルコールは適量なら良いが、過剰摂取は逆効果
⑤ 必要に応じて薬物療法
- スタチン系薬(コレステロール合成を抑制)
- エゼチミブ(腸からのコレステロール吸収を抑える)
- PCSK9阻害薬(LDL受容体を増やし、LDLを減らす)
