生化学検査

ICG試験(インドシアニングリーンテスト)|検査の基準値

クワホピ

ICG試験の概要

ICG試験(Indocyanine Green Test)は、肝機能の評価や血流動態の測定に用いられる診断検査の一つです。

ICG色素は肝臓で除去され排泄されることから、肝臓の血流量と肝臓細胞の排泄能力(解毒作用)を調べることができます。

インドシアニングリーン(ICG)という色素を静脈内に投与し、その排出速度や濃度を測定することで、肝臓の機能や循環動態を評価します。

他の異物排泄試験に比べ、毒性や副作用は少ないことが特徴です。

ICG試験の原理

ICGは、静脈に投与されるとアルブミンと結合し、肝臓によって速やかに取り込まれ、胆汁中に排泄されます。

この特性を利用し、ICGの血中濃度の変化を測定することで、肝臓の以下の機能を評価します。

  • ICG取り込み能(肝細胞の能力)
  • ICG排泄能(胆汁排泄能力)
  • 血流動態(門脈血流量や心拍出量)

ICG試験の適応疾患や状況

ICG試験は、以下のような疾患や状況で行われます。

① 肝機能の評価

  • 肝硬変、肝炎、肝不全の診断・重症度評価
  • 肝切除術や移植の前評価(術後合併症のリスク予測)

② 心機能評価

  • 心不全患者の循環動態評価
  • 血管外漏出(capillary leakage)の評価

③ 血流評価

  • 門脈圧亢進症(食道静脈瘤のリスク評価)
  • 腫瘍の血流評価(ICG蛍光イメージングを利用)

ICG試験の検査方法

検査前は絶食で実施します。(早朝空腹時)

① ICG投与

  • 通常 0.5 mg/kg 〜 0.75 mg/kg のICGを静脈注射

② 血液サンプリング

  • 投与後 5分、10分、15分、20分 などの間隔で採血
  • 分光光度計または蛍光光度計を用いて血中ICG濃度を測定

③ パラメータの計算

  • ICG 15分停滞率(ICG-R15)
    • 投与15分後のICG残存率
    • 正常値:10%以下(高値は肝機能低下を示唆)
  • ICGクリアランス(ICG-K値)
    • ICGの消失速度を算出(K値が低いと肝機能低下)

ICG試験のメリットと注意点

ICG試験のメリット

  • 簡便で迅速(30分以内に結果が得られる)
  • 肝機能評価が客観的(術前評価に有用)
  • 非放射性で安全(副作用が少ない)

ICG試験の注意点

  • 腎機能の影響を受ける(腎不全患者では慎重に評価)
  • 肝血流依存(門脈血流障害があると正確な評価が困難)
  • ICGアレルギーのリスク(まれだが注意)

ICG試験の基準値と異常値

ICG試験の基準値

指標正常値異常値の意味
ICG-R1510%以下15%以上で肝機能低下を示唆
ICG-K値0.15以上0.1以下は肝機能低下

例:肝切除の適応判断

  • ICG-R15 < 10% → 肝切除可能
  • ICG-R15 10-20% → 部分切除可能(慎重に)
  • ICG-R15 > 20% → 肝切除は高リスク

ICG試験(インドシアニングリーンテスト)が高値の場合

ICG試験(インドシアニングリーンテスト)が高値の場合には、以下のことが考えられます。

① 肝細胞の変性や壊死を伴う疾患

  • 慢性肝炎
  • ウイルス性肝炎
  • 肝硬変
  • 肝臓癌

② 肝臓代謝異常

  • 脂肪肝
  • 糖尿病

③ 肝臓循環障害

  • 冠動脈や門脈の閉鎖や狭窄
  • 特発性門脈高血圧症

④ 胆汁流出障害

  • 肝内性および肝外性胆汁うっ滞

⑤ その他

  • 急性ショック
  • うっ血性心不全

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