療養病棟入院基本料における「褥瘡対策加算」の算定
医科点数表の解釈での「褥瘡対策加算」の記載内容
療養病棟入院基本料における褥瘡対策加算については、医科点数表の解釈において以下のように記載があります。
【A101 療養病棟入院基本料 注4】
当該病棟に入院している患者のうち、別に厚生労働大臣が定める状態のものに対して、必要な褥瘡対策を行った場合に、患者の褥瘡の状態に応じて、1日につき次に掲げる点数を所定点数に加算する。
イ 褥瘡対策加算1 15点
ロ 褥瘡対策加算2 5点
「厚生労働大臣が定める状態」については、以下の通りです。
【A101 療養病棟入院基本料】
【褥瘡対策加算の対象となる状態「注4」】
◇ 基本診療料の施設基準等
第五 病院の入院基本料の施設基準等
三 療養病棟入院基本料の施設基準等
(5)療養病棟入院基本料の注4に規定する厚生労働大臣が定める状態
別表第五の四に掲げる上程
別表第五の四 療養病棟入院基本料及び有床診療所療養病床入院基本料の注4に規定する厚生労働大臣が定める状態
ADL区分3の状態
(平20.3.5 厚生労働省告示第62号)
(最終改正;令6.3.5 厚生労働省告示第58号)
「A101 療養病棟入院基本料 注4」に対する右欄の記載は以下の通りです。
【療養病床入院基本料について:抜粋】
(8)「注4」に規定する褥瘡対策加算1及び2は、ADL区分3の状態の患者について、「別紙様式46※1」の「褥瘡対策に関する評価」を用いて褥瘡の状態を確認し、治療及びケアの内容を踏まえ毎日評価し、以下により算定する。
なお、以下において、「褥瘡対策に関する評価」における褥瘡の状態の評価項目のうち「深さ」の項目の点数は加えない当該患者のDESIGN-R2020※2の合計点数を「DESIGN-R2020の合計点」といい、暦月内におけるDESIGN-R2020の合計点が最も低かった日の点数を当該月における「実績点」という。
また、褥瘡の状態の評価の結果を「基本診療料施設基準通知」の「別添6」の「別紙8の2」の「医療区分・ADL区分等に係る評価票(療養病棟入院基本料)」の所定欄に記載し、治療及び看護の計画を見直した場合には、その内容を診療録等に記載する。
なお、特別入院基本料を算定する場合は、当該加算は算定できない。
ア 褥瘡対策加算1については、入院後若しくは新たに当該加算に係る評価を始めて暦月で3月を超えない間又は褥瘡対策加算2を算定する日以外の日において算定する。
イ 褥瘡対策加算2については、直近2月の実績点が2月連続して前月の実績点を上回った場合であって、DESIGN-R2020の合計点が前月の実績点より上回った日に算定する。
「療養病棟入院基本料に関する事務連絡」においての記載は以下の通りです。
【療養病棟入院基本料に関する事務連絡】
問 療養病棟入院基本料の注4に規定する褥瘡対策加算については、毎日評価が必要だが、
- 治療上、交換を要しない創傷被覆材を用いた際、褥瘡の状態を毎日評価できないが、評価はどのように行えばよいか?
- 褥瘡が複数箇所あるばあい、それぞれの褥瘡の評価の点数は合算すればよいか?
答
- 治療の必要から褥瘡を創傷被覆材で多い、1日のうちに状態が確認できない場合、創傷被覆材を用いている間の評価は、創傷被覆材を用いる直前の状態等、直近で確認した際の状態で評価すること。また、確認できない胸について、診療録等に記載すること。
- 複数の褥瘡がある場合は、重症度の高い褥瘡の点数を用いること。
(平30.7.10 その5・問15)
※1:別紙様式46(ダウンロード可能)
※2:褥瘡対策に関する評価(30日版)(ダウンロード可能)
「褥瘡対策に関する評価(30日版)」は、医科点数表の解釈に記載されているものではなく、別紙様式46を参考に作成したものです。
※3:DESIGN-R 2020(ダウンロード可能)
「DESIGN-R 2020」は、日本褥瘡学会で無料ダウンロードできるようになっています。
「褥瘡対策加算」の解釈
療養病棟入院基本料での「褥瘡対策加算」に関する記載についての解釈をまとめていきます。
「褥瘡対策加算」の対象患者・算定点数
褥瘡対策加算の対象患者と算定点数をまとめると以下のようになります。
「褥瘡対策加算」の対象患者・算定点数
ADL区分3の状態の患者様
(必要な褥瘡対策を行った場合)
⇩⇩⇩⇩⇩
褥瘡対策加算1(15点)・褥瘡対策加算2(5点)
(加算は1日につき行う)
◇ 特別入院基本料を算定する場合には、褥瘡対策加算は算定できません。
褥瘡対策加算の評価
褥瘡対策加算の評価についてまとめると以下のようになります。
褥瘡対策加算の評価
ADL区分3の状態の患者
⇩⇩⇩⇩⇩
「別紙様式46」の「褥瘡対策に関する評価」を用いて
褥瘡の状態を確認
⇩⇩⇩⇩⇩
治療・ケアの内容を踏まえ「毎日評価」
⇩⇩⇩⇩⇩
褥瘡対策加算1・2の振り分け
◇ 褥瘡の評価においては、暦月内の「DESIGN-R2020の合計点※1」で最も低い点数を「当該月の実績点」とする。
※1:DESIGN-R2020の合計点は、「深さ」の項目の点数を加えない合計点とする。
◇ DESIGN-R2020の合計点は、「医療区分・ADL区分等に係る評価票(療養病棟入院基本料)」の所定欄に記載する。
◇ 褥瘡の治療・看護の計画を見直した場合には、診療録等に記載する。
褥瘡対策加算1・2の振り分け
褥瘡対策加算1・2の振り分けについてまとめると以下のようになります。
褥瘡対策加算1・2の振り分け
≪褥瘡対策加算1≫
- 入院後、暦月で3月を超えない期間
- 新たに褥瘡対策加算の評価を始めて、暦月で3月を超えない期間
- 褥瘡対策加算2を算定しない日
≪褥瘡対策加算2≫
直近2月の実績点が、2月連続して前月の実績点を上回って、DESIGN-R2020の合計点が、前月の実績点を上回った日
「褥瘡対策加算」の算定のながれ
褥瘡対策加算は、ADL区分3の患者様に対して、褥瘡の評価に合わせて「褥瘡対策加算1(15点)」と「褥瘡対策加算2(5点)」のいづれかを算定するようになっています。
また、褥瘡対策加算1・2の評価と振り分けは、前述した通りです。
それらをフローチャートにすると以下のようになります。
①「別紙様式46★1」を使用した褥瘡評価
褥瘡の評価は「DESIGN-R 2020★2」を用いて、毎日評価を実施します。
★1:「別紙様式46」:褥瘡対策に関する評価
DESIGN-R 2020に沿って褥瘡の評価をすると、0~66点の合計点になります。
評価の内容 | 評価点 |
---|---|
滲出液 | 0・1・3・6 |
大きさ(㎠) | 0・3・6・8・9・12・15 |
炎症・感染 | 0・1・3・9 |
肉芽形成 | 0・1・3・4・5・6 |
壊死組織 | 0・3・6 |
ポケット(㎠) | 0・6・9・12・24 |
「DESIGN-R 2020」の合計点 | 0 ~ 66 点 |
★2:DESIGN-R 2020
「DESIGN-R 2020」は、日本褥瘡学会で無料ダウンロードできるようになっています。
②「暦月3月を超えない期間」を確認
以下の状態で、「暦月3月を超えない期間」を確認します。
- 入院
- 新たに褥瘡対策加算の評価を開始
当てはまる場合には、褥瘡対策加算1になります。
例.5/15を起算日とする場合
5/15を起算日とする場合には、暦月3月は8/14になるので、8/15から「褥瘡対策加算2」に該当するかの確認をする必要があります。
③「褥瘡対策加算2」に該当するかを確認(実績点の考え方★3)
以下の2つの項目を満たす場合、褥瘡対策加算2に該当します。
このときの実績点の考え方ですが、以下のように記載されています。
【療養病床入院基本料について:抜粋】
(8)
暦月内におけるDESIGN-R2020の合計点が最も低かった日の点数を当該月における「実績点」という。
ADL区分3の患者については、DESIGN-R2020に基き、「別紙様式46」を用いて毎日、褥瘡対策についての評価を行います。
★3:実績点の考え方(例.5/15を起算日とする場合)
実績点は「暦月内におけるDESIGN-R2020の合計点が最も低かった日の点数」になります。
例えば、5/15を起算日とした実績点を考える場合には、5/15~6/14までの褥瘡の評価点数を比較して、最も低かった日の点数がその暦月の実績点ということになります。
★4:「直近2月の実績点」が2月連続で「前月の実績点」を上回る
5/15を起算日とした場合、「直近2月の実績点」は実績点②と実績点③になります。
2月連続で「前月の実績点」を上回っていないかを確認する必要があるので、
実績点① < 実績点② < 実績点③
の状態かどうかを確認する必要があります。
★5:「DESIGN-R 2020の合計点」が「前月の実績点」を上回る日
仮に、『★4』で説明した「直近2月の実績点」が2月連続で「前月の実績点」を上回っていた場合には、その暦月の期間は毎日の褥瘡の評価による「DESIGN-R 2020の合計点」と「前月の実績点」を比較する必要があります。
そして、「DESIGN-R 2020の合計点」が「前月の実績点」を上回っていた場合には、その日は「褥瘡対策加算2」を算定することになります。