語句

せん妄

せん妄は、突然発生して変動する精神機能の障害で、通常は回復可能です。

多くの病気、薬剤、毒物などが原因になり、原因になっている異常を迅速に処置・治療することで治癒します。

≪せん妄の要因≫

せん妄

せん妄は身体疾患、薬剤、感覚遮断などから生じます。

終末期を除き可逆的で、一過性に経過し通常10~12日程度で消退しますが、1ヵ月以上持続する例が15%にも達します。

せん妄に気づかれなければ改善しないこともあり、とくに薬剤性せん妄には注意が必要です。

≪薬剤性せん妄の原因薬剤≫

薬剤性せん妄はせん妄全体の約10~20%を占める重要な要因になるので、投与されている薬剤には注意が必要です。

薬剤薬剤性せん妄に占める割合(%)
オピオイド54
ベンゾジアゼピン24
コルチコステロイド21
H2受容体拮抗薬19
抗けいれん薬6
抗コリン薬6
抗ヒスタミン薬4
その他9

≪認知症からみたせん妄≫

せん妄

※AD:アルツハイマー型認知症
※CVD:脳血管障害
※AD+CVD:混合型認知症
※VaD:脳血管性認知症
※DLB:レビー小体型認知症
※FTLD:前頭側頭葉変性症
※FTD:前頭側頭型認知症

認知症の中で最も高頻度にせん妄を合併したのは脳血管性認知症で、認知症に脳血管障害が併存すればせん妄有症率が高くなります。

認知症にせん妄が併存するとADLが低下しBPSDも重篤になるため、急激なADL低下やBPSDの増悪もせん妄を疑います

BPSD(認知症の行動・心理症状)

認知症の方にみられる精神症状・行動症状のことをBPSD(認知症の行動・心理症状)といいます。

BPSDは、中核症状である認知機能障害とは別にご本人の生活の質を低下させたり、介護負担を増やす原因になります。

BPSDには幻覚、妄想、興奮、不穏、徘徊、焦燥、社会的に不適切な言動、性的逸脱行為、暴言、抑うつなどが含まれます。

「最近、怒りっぽくなった(易怒性・性格変化)」「ものが無くなると、家族の仕業だと疑う(もの盗られ妄想)」「ものごとに関心がないように見える、一日横になっている(意欲低下)」などといった兆候が現れることもあります。

≪せん妄の判断基準(DSM-5)≫

下記のすべてを満たす場合にせん妄に該当します。

①注意・意識の障害
 :ぼーっとして周囲の状況が分からない。

②変動性
 :短期間で出現(通常数時間~数日)
 :1日の中でも症状にむらがあり夜間に悪化

③認知・知覚の異常
 :記憶障害、見当識障害、幻覚、妄想など
 :認知症の進行では説明困難

④原因となる薬物、または医学的疾患が存在する

≪せん妄の下位分類≫

過活動型せん妄低活動型せん妄混合型せん妄
精神運動興奮や幻覚、妄想などを伴う。転倒やルート類の抜去、暴言など医療者や介護者の負担が大きい。活動性が低下して状況の認識力が低下し、会話量が減って無気力、無表情となる。うつ病や認知症との鑑別を要することがある。過活動型、低活動型の両方の症状を認める。

過活動型せん妄は比較的わかりやすいが、低活動型せん妄はわかりにくいのが特徴です。

せん妄の下位分類の診断基準もあるが、実際には判断しづらいです。

1:過活動型(hyperactive type)

直前の24時間に以下のうちの2項目以上のはっきりした証拠がある。

  1. 動作性の活動量の増加:過度な水準の活動の証拠があるか
  2. 活動の制御喪失:患者は環境に相応しい活動水準を維持できているか
  3. 落ち着かなさ:患者は精神的に落ち着かないと訴えたり、焦燥感があるようにみえるか
  4. 徘徊:患者ははっきりとした行き先や目的なく動き回っているか

2:低活動型(hypoactive type)

直前の24時間に以下のうちの2項目以上のはっきりした証拠がある。

  1. 活動量の減少:患者は普段のあるいは周囲の環境に相応しい活動が低下しているか
  2. 動作速度の低下:患者は動き始めや動作の遂行が遅くないか
  3. 周囲の認識の低下:患者は周囲の環境に対する感情的な反応がいつもより乏しくみえないか
  4. 発語量の減少:患者は周囲の環境に関する発語量が低下していないか
  5. 発語速度の低下:患者は普段よりゆっくり話すか
  6. 無関心:患者は周囲の環境への反応が少ないか
  7. 覚醒水準の低下/引きこもり:患者は周囲の環境やその重要性に対する認識が欠けているようにみえるか、孤立しているようにみえるか

3:混合型(mixed type)

直前の24時間以内に過活動型と低活動型の両方の証拠がある。

4:運動性亜型はなし

直前の24時間以内に過活動型と低活動型の証拠がない。