医療療養病床の成り立ちとその役割

クワホピ

医療法における病床区分の成り立ち

現在の病院の病床種別は、医療法において5つに分類(一般病床・療養病床・精神病床・感染症病床・結核病床)されています。

この5つの分類は初めからこの形であったわけではなく、少しずつ改正されながら今の形になったものです。

制度当初(昭和23年~)

病床区分の制度当初は、「結核病床・伝染病床・精神病床・その他の病床」の4つの病床で分類されていました。

医療療養病床の成り立ちとその役割

特例許可老人病棟の導入(昭和58年~)

高齢化の進展に対応し、「特例許可老人病棟」の導入を行いました。

医療療養病床の成り立ちとその役割

療養型病床群制度の創設(平成4年~)

長期療養を必要とする患者様の医療に適した施設を作る必要があり、「療養型病床群」の導入を行いました。また、「伝染病床」の名称を「感染症病床」と改めました。

医療療養病床の成り立ちとその役割

一般病床、療養病床の創設(平成12年~)

「一般病床」を創設し、「特例許可老人病棟」と「療養型病床群」をまとめ、あらたに「療養病床」を創設しました。これによって、現在の一般病床・療養病床・精神病床・感染症病床・結核病床の5つの病床区分になりました。

医療療養病床の成り立ちとその役割

5つの病床区分の特徴

医療法では、病院の病床は一般病床・療養病床・精神病床・感染症病床・結核病床の5つに分類され、行われている医療の内容もそれぞれ異なっています。

一般病床

一般病床は主に急性期の病状の診断と治療を目的とした病床です。

病気の発見・診断・治療を目的とし、そのための必要な機材・設備・薬剤などが豊富に準備されています。

医療法の病床区分において一般病床は、「精神病床、感染症病床、結核病床、療養病床以外の病床」となっています。

そのため、他の4つの病床でないものはすべて一般病床という扱いになります。

療養病床

療養病床は主に慢性期の患者様の療養や自宅復帰するまでの医療を目的とした病床です。

長期に渡り療養を必要とする患者様、自宅へ戻るには不安が残る慢性期の患者様に対し、自宅復帰を目的とした入院生活を送ってもらいます。

精神病床

精神病床は精神的な疾患を持つ患者様の診断・治療を目的とした病床です。

うつ症状や自律神経失調症などの精神的な疾患を持つ患者様への治療を行います。

感染症病床

感染症病床は感染症を患う患者様の診断・治療を目的とした病床です。

感染症法に規定する一類感染症、二類感染症及び新感染症の患者を入院させるための病床になります。

結核病床

結核病床は結核を患う患者様の診断・治療を目的とした病床です。

医療療養病床に求められるもの

医療療養病床は、主に慢性期の患者様の療養や自宅復帰するまでの医療を目的とした病床であり、長期に渡り療養を必要とする患者様、自宅へ戻るには不安が残る慢性期の患者様に対し、自宅復帰を目的とした入院生活を送ってもらいます。

そのため、一般病床の受け皿となる体制を整備するとともに、慢性期医療を必要とする患者様に対し、検査や処置といった診療・治療が中心の入院医療ではなく、人間らしい尊厳を重視したケアを主体とした療養環境を整える必要があります。

その中には、疾患の悪化や合併症や廃用症候群の予防に加え、看取りを視野に入れたターミナルケアといったものも含まれます。

具体的な対象患者
  • 急性期治療後で継続的な医療が必要な患者
  • 神経難病等の患者
  • 終末期の患者
  • 経口摂取が困難な患者
  • 重度の認知症患者
  • 継続的なリハビリテーションの必要な患者

精神科病床で内科的治療が十分に行えない場合や、認知症で問題行動があり急性期病床での受け入れが困難な場合などのときも、療養病床が受け皿となり患者様の受入れを行っています。

医療区分とADL区分

医療療養病床では、厚生労働省の定めた規定に従い、患者様の医療の必要度に応じた医療区分とADL自立度(日常生活自立度)の視点から考えられたADL区分による評価を行っています。

医療区分・ADL区分はともに1~3の3段階で評価され、医療療養病床の入院基本料はこの医療区分・ADL区分を用いた30分類になっています。

そのため、医療療養病床において医療区分・ADL区分を用いた患者様の評価はとても重要なものになります。

医療区分・ADL区分を用いた30分類の入院基本料(R6.6~)

療養病棟入院基本料の入院料は、医療区分とADL区分の組み合わせによって30の入院料に分類されます。

疾患・状態の医療区分1~3
×
処置等の医療区分1~3
×
ADL区分1~3

⇩⇩⇩⇩⇩

3×3×3=計27分類

⇩⇩⇩⇩⇩

上記の計27分類にスモンに関する3分類を合わせた計30分類の評価

処置等 医療区分
処置等 医療区分
処置等 医療区分
疾患・状態 医療区分
ADL区分
3 2 1

① ② ③
ADL区分
3 2 1

④ ⑤ ⑥
ADL区分
3 2 1

⑦ ⑧ ⑨
疾患・状態 医療区分
ADL分
3 2 1

⑩ ⑪ ⑫
ADL区分
3 2 1

⑬ ⑭ ⑮
ADL区分
3 2 1

⑯ ⑰ ⑱
疾患・状態 医療区分
ADL区分
3 2 1

⑲ ⑳ ㉑
ADL区分
3 2 1

㉒ ㉓ ㉔
ADL区分
3 2 1

㉕ ㉖ ㉗
スモン
ADL区分
3 2 1

㉘ ㉙ ㉚

合わせて読みたい
医療区分・ADL区分の手引き
医療区分・ADL区分の手引き

まとめ

「一般病床・療養病床・精神病床・感染症病床・結核病床」の5つに分類される病床群に含まれる医療療養病床は、少子高齢化に伴う疾病構造の変化によってつくられた病床群です。

主に慢性期の患者様の療養や自宅復帰するまでの医療を目的としており、他の病床群に入院することができない患者様の受け皿としての重要な役割もあります。

ただし、医療療養病床の運営にあたってはただ闇雲に受け入れを行うのではなく、医療区分・ADL区分を用いた30分類の入院料の算定などを考慮した受け入れ体制も考えなくてはいけません。

その点も含めて、医療療養病床にどのような患者様を受け入れることが求められているのかを理解しましょう。

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