【入院診療計画の基準】基本的な概要と考え方
「入院診療計画の基準」について医科点数表の解釈での記載内容
「入院診療計画の基準」については、医科点数表の解釈において以下のように記載があります。
【1 入院診療計画の基準】
(1)当該保険医療機関において、入院診療計画が策定され、説明が行われている。
(2)入院の際に、医師、看護師、その他必要に応じ関係職種が共同して総合的な診療計画を策定し、患者に対し、「別添6」の「別紙2」(略ーー「診療方針に関する法令編」参照。)又は「別紙2の3」(略ーー「診療方針に関する法令編」参照。)を参考として、文書により病名、症状、治療計画、検査内容及び日程、手術内容及び日程、推定される入院期間等について、入院後7日以内に説明を行う。ただし、高齢者医療確保法の規定による療養の給付を提供する場合の療養病棟における入院診療計画については、「別添6」の「別紙2の2」(略ーー「診療方針に関する法令編」参照。)を参考にする。なお、当該様式にかかわらず、入院中から退院後の生活がイメージできるような内容であり、年月日、経過、達成目標、日ごとの治療、処置、検査、活動・安静度、リハビリ、食事、清潔、排泄、特別な栄養管理の必要性の有無、教育・指導(栄養・服薬)・説明、退院後の治療計画、退院後の療養上の留意点が電子カルテなどに組み込まれ、これらを活用し、患者に対し、文書により説明が行われている場合には、各保険医療機関が使用している様式で差し支えない。
(3)入院時に治療上の必要性から患者に対し、病名について情報提供し難い場合にあっては、可能な範囲において情報提供を行い、その旨を診療録に記載する。
(4)医師の病名等の説明に対して理解できないと認められる患者(例えば小児、意識障害患者)については、その家族等に対して行ってもよい。
(5)説明に用いた文書は、患者(説明に対して理解できないと認められる患者についてはその家族等)に交付するとともに、その写しを診療録に添付するものとする。
(6)入院期間が通算される再入院の場合であっても、患者の病態により当初作成した入院診療計画書に変更等が必要な場合には、新たな入院診療計画書を作成し、説明を行う必要がある。
(入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策、栄養管理体制、意思決定支援及び身体的拘束最小化の基準並びに栄養管理体制未整備減算の基準「通則7」、「通則8」)
◇ 基本診療料の施設基準等
第四 入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策、栄養管理体制、意思決定支援及び身体的拘束最小化の基準
------以下、抜粋------
一 入院診療計画の基準
(1)医師、看護師等の共同により策定された入院診療計画であること。
(2)病名、症状、推定される入院期間、予定される検査及び手術の内容並びにその日程、その他入院に関し必要な事項が記載された総合的な入院診療計画であること。
(3)患者が入院した日から起算して7日以内に、当該患者に対し、当該入院診療計画が文書により交付され、説明がなされるものであること。
(平20.3.5 厚生労働省告示第62号)
(入院診療計画に関する事務連絡)
問 入院診療計画は、文書により作成後、入院後7日以内に患者に対して説明をしなければならないが、患者が昏睡状態であるなど、入院後7日以内に患者に説明ができなかった場合には、当該患者の入院に係る入院基本料又は特定入院料の全てが算定できないのか。
答 医師の病名等の説明に対して理解ができないと認められる患者については、その家族等に対して説明を行えば算定できる。
また、説明できる家族等もいない場合には、その旨カルテに記載し算定できる。なお、患者の状態が改善し説明が行える状態になった場合又は家族等が現れた場合等には、速やかに説明を行い、その旨カルテに記載すること。
(平19.4.20 その7・問32)
(入院診療計画に関する事務連絡)
問 入院診療計画について、入院前に外来で文書を提供し、説明した場合はどうなるのか。
答 入院後7日以内に行ったものと同等の取扱となる。
(平24.3.30 その1・問16)
「別添6」の「別紙2」:入院診療計画書
医科点数表の解釈(令和6年6月版)p1415
「別添6」の「別紙2の2」:入院診療計画書
医科点数表の解釈(令和6年6月版)p1416
「別添6」の「別紙2の3」:入院診療計画書
医科点数表の解釈(令和6年6月版)p1416
「入院診療計画の基準」についての解釈
医科点数表の解釈における「入院診療計画の基準」の記載についてまとめていきます。
入院診療計画の策定と説明
入院に際しては、「なぜ入院するのか」「入院してどのような治療を行うのか」「退院に向かっての目標と期間」などを計画し、患者様本人に説明します。
そのときの計画の策定は、医師、看護師、その他の関係職種が共同して行い、入院後7日以内に説明を行う必要があります。
入院診療計画の策定と説明
入院に際して…
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医師、看護師、その他の関係職種が共同して診療計画を策定
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入院後7日以内に説明を実施
※入院診療計画の中身
- 病名
- 症状
- 治療計画
- 検査内容及び日程
- 手術内容及び日程
- 推定される入院期間
※説明に対して理解ができないと認められる患者については、その家族等に対して説明を行う(例.小児、意識障害患者)
※説明に用いた文書については患者様に交付し、その写しを診療録に貼付する
※入院期間が通算される再入院の場合でも、計画書に変更等が必要な場合、新たに作成し説明を行う
入院診療計画の様式とその内容
入院診療計画の様式とその内容
入院診療計画書の様式は、以下の3つの書式を参考にする
- 「別添6」の「別紙2」
- 「別添6」の「別紙2の2」
- 「別添6」の「別紙2の3」
※療養病棟において高齢者医療確保法の規定による療養の給付を提供する場合は、「別添6」の「別紙2の2」を参考にする(75歳以上の高齢者等)
医科点数表の解釈(令和6年6月版)p1415~
電子カルテなどに組み込む場合
電子カルテなどに組み込み、患者様に対し、文書により説明が行われている場合には、各保険医療機関が使用している様式で構いません。
電子カルテなどに組み込む内容
- 入院中から退院後の生活がイメージできる内容
- 年月日
- 経過
- 達成目標
- 日ごとの治療
- 処置
- 検査
- 活動・安静度
- リハビリ
- 食事
- 清潔
- 排泄
- 特別な栄養管理の必要性の有無
- 教育・指導(栄養・服薬)・説明
- 退院後の治療計画
- 退院後の療養上の留意点
入院診療計画書の説明にあたって(補足)
入院診療計画は、入院して7日以内に作成し、患者様またはその家族等に説明を行い、診療録にその写しを添付することとなっていますが、以下のような場合においても適切な対応を求められます。
理解ができないと認められる患者様の場合
患者様が寝たきりである、認知症がひどい状態で理解ができないなど、説明に対して理解ができないと認められる患者様については、その家族等に説明をする必要があります。
さらに、以下のような場合にはそれに合わせた対応を行います。
①家族が遠方にいるなどの理由でなかなか来院できない場合
電話などの通信手段で説明を行い、郵送で署名をもらうなど工夫をし、その旨を必ず診療録に記載します。
②説明できる家族等がいない場合
説明できる家族等がいない旨を診療録に記載し、「患者様の状態が改善し説明が可能になる」「家族等が現れる」などの状態に合わせて、速やかに説明を行い、その旨を診療録に記載します。
長期療養されている患者様で入院期間が数年に及ぶ場合
医療療養病床など慢性期の病床においては、入院期間が数年に及んでいる場合があります。
このような場合には、入院診療計画書を定期的に更新し、見直しをすることが望ましいです。
半年~1年の間隔で入院診療計画書を更新することが大切です。
適時調査における主な指摘事項
令和4年度 九州厚生局:抜粋
入院診療計画について、次の不適切な例が認められた。
- 医師、看護師、その他必要に応じて関係職種が共同して総合的な診療計画を策定していない。
- 通知で定められている項目を網羅しておらず、必要事項を記載していない。
- 内容が画一的であり、個々の患者の病状に応じた記載となっていない。
- 主治医以外の担当者名欄に関係した職種及び氏名を記載していない。
- 入院診療計画書の写しを患者に交付し、原本を診療録に添付している。
平成29年度 九州厚生局:抜粋
入院診療計画の基準について
- 入院診療計画書について、関係職種が共同して総合的な診療計画を策定すること。
- 入院診療計画書の記載内容について、画一的な表現が多いため、患者の個別性に配慮し、具体的で分かりやすい表現となるよう工夫すること。
- 入院診療計画書について、療養病棟の後期高齢者の患者の場合は、「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(平成28年3月4日保医発0304第1号)別添6の別紙2の2を参考に作成すること。
- 入院診療計画書について、通知で定められた項目を網羅し、必要事項を適切に記載すること。
- 入院診療計画書は、原本を患者又はその家族等に交付し、その写しを診療録に貼付すること。
- 入院時の患者の栄養状態を医師、看護職員だけでなく管理栄養士も共同して確認し、特別な栄養管理の必要性の有無について記載すること。