「入院診療計画」の基本的な考え方とその基準について
患者様が入院された場合には必ず『入院診療計画書』を作成します。
この入院診療計画について基本的な考え方とその基準について理解しましょう。
入院診療計画の基本的な考え方
患者様が病院に入院される際には、「どのような病状で」 「どのような治療を行い」 「どのくらいの期間で」というように、入院時に退院までのある程度の計画を立てるよう定められています。
また、その入院における計画は病院スタッフのみで情報を共有するのではなく、患者様本人に説明(患者様本人が理解が困難な場合にはその家族等)する必要があります。
患者様本人にとっても、「なぜ入院するのか?」「何のために入院するのか?」「どのくらいの期間入院するのか?」などのことを分からないままで入院するのはとてもつらいです。
そのため、きちんと入院診療計画を立て、患者様へ説明することはとても重要なことになります。
では、この入院診療計画の説明はいつ行われるべきでしょうか?
この説明するまでの期間は ”入院後7日間以内” と定められています。
入院後、早い段階で説明をするべきなのは当然のことです。
退院前に「このような目的で入院していました」などと説明をされても気持ちのいいものではありません。
入院するときには、可能な限り早い段階で説明はほしいものです。
入院診療計画の説明は7日以内となっていますが、この ”7日間” という期限が設けられているのには理由があります。
入院診療計画書にはある程度参考にするよう定められた書式が存在し、その書式に沿って計画書は作成するようになっています。
そのため、きちんと計画書が作成されるためにある程度の期日を設けています。
入院診療計画書の基準
「入院診療計画書」にはその運用にあたり基準が設けられており、医科点数表の解釈においては以下のように記載されています。
1 入院診療計画の基準
(1)当該保険医療機関において、入院診療計画が策定され、説明が行われている。
(2)入院の際に、医師、看護師、その他必要に応じて関係職種が共同して総合的な診療計画を策定し、患者に対し、「別添6」の「別紙2」(略ーー「診療方針に関する法令編」参照。)又は「別紙2の3」(略ーー「診療方針に関する法令編」参照。)を参考として、文書により病名、症状、治療計画、検査内容及び日程、手術内容及び日程、推定される入院期間等について、入院後7日以内に説明を行う。ただし、高齢者医療確保法の規定による療養の給付を提供する場合の療養病棟における入院診療計画については、「別添6」の「別紙2の2」(略ーー「診療方針に関する法令編」参照。)を参考にする。なお、当該様式にかかわらず、入院中から退院後の生活がイメージできるような内容であり、年月日、経過、達成目標、日ごとの治療、処置、検査、活動・安静度、リハビリ、食事、清潔、排泄、特別な栄養管理の必要性の有無、教育・指導(栄養・服薬)・説明、退院後の治療計画、退院後の療養上の留意点が電子カルテなどに組み込まれ、これらを活用し、患者に対し、文書により説明が行われている場合には、各保険医療機関が使用している様式で差し支えない。
(3)入院時に治療上の必要性から患者に対し、病名について情報提供し難い場合にあっては、可能な範囲において情報提供を行い、その旨を診療録に記載する。
(4)医師の病名等の説明に対して理解できないと認められる患者(例えば小児、意識障害患者)については、その家族等に対して行ってもよい。
(5)説明に用いた文書は、患者(説明に対して理解できないと認められる患者についてはその家族等)に交付するとともに、その写しを診療録に添付するものとする。
(6)入院期間が通算される再入院の場合であっても、患者の病態により当初作成した入院診療計画書に変更等が必要な場合には、新たな入院診療計画書を作成し、説明を行う必要がある。
「入院診療計画の基準」の解釈
「入院診療計画の基準」の解釈を以下にまとめました。
入院診療計画の策定と説明
病院に入院する際には、「なぜ入院するのか」 「入院してどのような治療を行うのか」 「退院に向かっての目標と期間」などを計画し、患者様本人に説明することが必要です。
- なぜ入院するのか
- 入院してどのような治療を行うのか
- 退院に向かっての目標と期間
7日以内に説明を行う
入院診療計画は、入院の際に、医師、看護師、その他必要に応じ関係職種が共同して作成します。
また、作成したものについては入院後7日以内に説明を行う必要があります。
- 病名
- 症状
- 治療計画
- 検査内容、日程
- 手術内容、日程
- 推定される入院期間 など
入院診療計画の様式
入院診療計画の様式については、参考にしないといけないものが定められています。
「医科点数表の解釈」に記載される「別添6」の「別紙2」、「別紙2の3」を参考にしたものを使用し、医療療養病床においては、「別添6」の「別紙2の2」を参考にしたものを使用します。
なお、以下の要点が電子カルテなどに組み込まれ、これらを活用し患者に対して文書により説明が行われている場合には、指定された様式でなくても構いません。
- 入院中から退院後の生活がイメージできる内容
- 年月日
- 経過
- 達成目標
- 日ごとの治療
- 処置
- 検査
- 活動、安静度
- リハビリ
- 食事
- 清潔
- 排泄
- 特別な栄養管理の必要性の有無
- 教育、指導(栄養、服薬)、説明
- 退院後の治療計画
- 退院後の療養上の留意点
(別紙2)
(別紙2-2)
(別紙2-3)
説明が困難な場合への対応
入院時に治療上の必要性から患者へ病名について情報提供がし難い場合には、可能な範囲で情報提供を行い、診療録に記載します。
医師の病名等の説明に対して理解ができないと認められる患者(小児、意識障害患者など)についてはその家族等へ行ってもよいことになっています。
説明後の文書は貼付する
説明に用いた文書については患者様に交付し、その写しを診療録に貼付します。
再入院の場合
入院期間が通算される再入院の場合であっても、患者の病態により当初作成した入院診療計画書に変更が必要な場合には、新たな入院診療計画書を作成し説明を行います。
入院診療計画書診療計画に関する事務連絡
問:
入院診療計画は、文書により作成後、入院後7日以内に患者に対して説明をしなければならないが、患者が昏睡状態であるなど、入院後7日以内に患者に説明ができなかった場合には、当該患者の入院に係る入院基本料、または特定入院料のすべてが算できないのか?
答:
医師の病名等の説明に対して理解ができないと認められる患者については、その家族等に対して説明を行えば算定できる。
また、説明できる家族等もいない場合には、その旨カルテに記載し算定できる。
なお、患者の状態が改善し説明が行える状態になった場合、または家族等が現れた場合等には、速やかに説明を行い、その旨カルテに記載すること。
問:
入院診療計画について、入院前に外来で文書を提供し、説明した場合はどうなるのか?
答:
入院後7日以内に行ったものと同等の取扱いとなる。
診療計画書の作成にあたって(補足)
診療計画書は入院して7日以内に作成し、患者様またはその家族等に説明を行い、診療録にその写しを添付することとなっています。
以下のような場合においてもきちんとした対応が必要になります。
寝たきりの患者様であり家族が遠方でなかなか来院できない
患者様が寝たきりであったり認知症がひどい場合には、患者様本人ではなくその家族に説明をする必要があります。
ただ、家族がなかなか来院できないときには、診療計画書の署名を7日以内にもらえない場合があります。
このような場合には、電話などの通信手段で説明を行い、郵送で署名をもらうなど工夫が必要です。
また、その旨を必ず診療録に記載するようにします。
長期療養されている患者様で何年も入院されている
医療療養病床など慢性期の患者様が入院されるような病床においては、退院されず何年も入院されている場合があります。
このような場合には、入院診療計画書を定期的に更新する必要があります。
慢性期の患者様であっても長い期間状態がまったく同じということはありません。
半年~1年の間隔で入院診療計画書を更新することが大切です。
平成29年度 適時調査における主な指摘事項
平成29年度の適時調査において「入院診療計画」については以下のような指摘が多くされました。
- 入院診療計画書について、関係職種が共同して総合的な診療計画を策定すること。
- 入院診療計画書の記載内容について、画一的な表現が多いため、患者の個別性に配慮し、具体的で分かりやすい表現となるよう工夫すること。
- 入院診療計画書について、療養病棟の後期高齢者の患者の場合は、「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(平成28年3月4日保医発0304第1号)別添6の別紙2の2を参考に作成すること。
- 入院診療計画書について、通知で定められた項目を網羅し、必要事項を適切に記載すること。
- 入院診療計画書は、原本を患者又はその家族等に交付し、その写しを診療録に貼付すること。
- 入院時の患者の栄養状態を医師、看護職員だけでなく管理栄養士も共同して確認し、特別な栄養管理の必要性の有無について記載すること。