診療録(カルテ)・帳票類の整備

クワホピ

診療録(カルテ)は、患者様に実施された診療の事実・内容を証明する重要な記録であり、診療の都度、所定の事項を正確に記載して整備、保存しておく必要があります。

また、保険診療において保険請求の根拠は「診療録」になります。

そのため、「診療録への症状・所見・処方・処置等の記載」は、保険医の日常診療において重要な業務でもあります。

診療録(カルテ)・帳票類の保存期間

診療録(カルテ)・帳票類の保存期間は、各法令において以下のように定められています。

項目保存期間(含内容)根拠法令
診療録(カルテ)5年間[診療完結の日から]・医師法第24条
・療養担当規則第9条等
帳簿等の保存3年間[療養完結の日から]
・療養の給付の担当(及び保険外併用療養費に係る療養の取扱い)に関する帳簿及び書類その他の記録(保険診療に係る諸帳簿)
・療養担当規則第9条
・療養担当基準(高齢者医療確保法)
診療に関する諸記録2年間
・病院日誌
・各科診療日誌
・処方箋
・手術記録
・看護記録
・検査所見記録
・エックス線写真
・入院、外来患者数の記録
・医療法施行規則第20条第10号

(注)生活保護法に係る診療の場合の保存期間は5年です。(生活保護法)指定医療機関医療担当規定第8条。

診療録は「診療完結の日から5年間」、帳簿等の保存は「療養完結の日から3年間」と『完結の日から…』となっているので注意しましょう。

診療録(カルテ)等についての法令

診療録(カルテ)等についての法令は以下の通りです。

医師法 第24条

1 医師は診療したときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。

2 前項の診療録であって、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、5年間これを保存しなければならない。

医師法施行規則 第23条

診療録の記載事項は次のとおりである。

  1. 診療を受けた者の住所、氏名、性別及び年齢
  2. 病名及び主要症状
  3. 治療方法(処方及び処置)
  4. 診療の年月日

療養担当規則

第8条

 保険医療機関は第22条の規定による診療録に療養の給付の担当に関して必要な事項を記載し、これを他の診療録と区別して整備しなければならない。

第9条

 保険医療機関は療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から3年間保存しなければならない。ただし患者の診療録にあってはその完結の日から5年間とする。

完結の日とは、「治ゆ」・「死亡」・「中止」により診療が終了した日のこと。

第22条

 保険医は患者の診療を行った場合には遅滞なく様式第1号又はこれに準ずる様式の診療録に当該診療に関し必要な事項を記載しなければならない。

「様式第1号」でなくても、準じた様式であれば問題ありません。

自由診療分については、原則として保険診療分とは区別して診療録を作成します。

介護保険は、医療保険と1つの診療録に記載することができます。同じ場所に記載する場合には、下線または枠囲みするなどして医療保険と介護保険の部分を区別します。

診療録(カルテ)の注意事項

診療録(カルテ)の全般的注意事項は以下の通りです。

診療録の基本

① 診療録の役割

診療録は、医師法で記載・保存が義務付けられており、以下のようなことで使用されます。

  • 診療報酬請求の原簿
  • 個別指導・監査等の際の持参物
  • 医療事故・訴訟の際の証拠書類

適正な診療を行っていたとしても、診療録の記載に不備があれば説得力に欠けてしまうことになるので、適正な診療録の記載と保存が必要になります。

② 診療録の記載の工夫

診療録は、記載をできるだけ簡便にして、診断・治療・経過が一目で分かる工夫をします。

そして、レセプトも正確に記載し、的確な請求ができるように整備をする必要があります。

後日記憶を頼りに診療録を作成したり、診療事項をメモに残しておいて、あとでまとめて転載する等のことは絶対に避けなければいけません。

③ 電子カルテの場合の注意点

電子カルテでは修正履歴が残るため、より遅滞なく記載することが求められます。

修正履歴については、個別指導や裁判において真正性の観点から履歴の表示を求めれられることがあります。

また、テンプレートを活用して入力負担を軽減する場合も、画一的にならないように注意が必要です。

④ 手書きカルテの場合の注意点

手書きカルテは、誰が見ても分かるような文字で記載することが必要です。

裁判の証拠として提出する場合に、自分にしか分からないようなカルテでは著しく不利になることもありえます。

診療録の記載における責任の所在

① 診療録の記載欄における責任の所在について

診療録は、「保険医療機関が責任をもって記載する欄」「保険医が責任を持って記載する欄」に分かれています。

保険医療機関の記載責任に属する欄保険医の記載責任に属する欄
【 医療費の請求に必要な欄 】【 診療の事実に関する欄 】
・公費負担者番号
・公費負担医療の受給者番号欄
・保険者番号欄
・被保険者証、被保険者手帳欄
・被保険者氏名欄
・資格取得欄
・受診者欄
・保険者名欄
・点数欄  など
・傷病名、開始日、終了日、転帰欄
・既往症、原因、主要症状、経過等欄
・処方、手術、処置等欄  など

② 診療録の代筆における責任の所在について

保険医の記載責任に属する欄を医師以外の者に入力・代筆させることも可能ですが、以下を実施することによって診療した保険医が責任を負うことになります。

  • 電子カルテ: 診療を行った医師の承認
  • 手書きカルテ: 診療を行った医師のサイン又は押印

③ 1人の患者様に複数の医師が診療に当たる場合について

1人の患者様に複数の医師が診療に当たる場合は、記録の都度、以下を実施し、記録者と指示者を明確にします。

  • 電子カルテ: 診療を行った医師の承認
  • 手書きカルテ: 診療を行った医師のサイン又は押印

医師以外の職種(看護師等)についても、記録者が明確になるようにします。

事務職員の代筆・代行

2007年12月に、医師の業務負担軽減を目的として「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」が出されました。

その中では、医師が最終的に確認し署名すること等を条件に、事務職員がカルテの代筆をしてもよいことが明示されています。

また、同通知で診断書、処方箋、主治医意見書等の作成代行を事務職員が行えることも示されています。

ただし、代行する事務職員については、個人情報の取扱いに十分留意するとともに、医療の質の低下を招かないように、関連業務について一定の知識を有した者が行うことが望ましいとされています。

診療録の保管

① 診療録の保管期限について

診療録は、保険診療以外の診療録とは区別して、「完結の日から最低5年間」は整理保管する必要があります。

ここでいう「完結の日」とは、「治ゆ・死亡・中止」により診療が終了した日のことになります。

なお、検査記録やレントゲンフィルムなどの保存義務は3年間になっています。

医療事故に関する時効は、最高20年であることも念頭に入れておきましょう。

② 電子カルテ導入後の紙カルテの電子化について

電子カルテを導入した際に、旧カルテ(紙カルテ)をスキャナ等で電子化することは問題ありません。

その場合には、電子化した紙カルテの保存義務は法定上なくなりますが、破棄を義務付けられていないので取扱いに注意が必要です。

「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に沿って、管理責任者が電子化されたことを確認する必要があります。

③ 診療録に対する守秘義務について

診療記録は患者様の秘密に関することが記載されています。

刑法134条において、部外者への閲覧については守秘義務が課せられているため、特別の場合以外は、診療録を院外に持ち出すことはできません。

④ 診療録の更新について

診療録を更新して別冊を作成する場合は、診断名をはじめ既往歴やこれまでの経過の要約を必ず転記する必要があります。

診療録等の記載にパソコン、ワープロを使用する場合

診療録等の記載について、パソコンやワープロ等のOA機器を使用した記載が原則的に認められています。(昭和63年5月6日保険発第43号)

カルテ等の記載作成した医師の責任が明白であればOA機器で作成可能。
この場合、作成基礎となる情報管理体制に十分留意する。
保険カルテ等の記載①と同様に扱う。
この場合、「保険医の署名、又は記名押印」が必要。
処方箋の記載①と同様に扱う。
この場合、「医師等の署名、又は記名押印」が必要。
医療機関の処方箋に係るOA機器の導入については、患者様へ交付が必要。
助産録の記載①と同様に扱う。
その他の診療に関する諸記録①に準じて扱う。

電子カルテの導入と指導への対応

電子カルテの運用にあたっては、ガイドラインに則ったシステムの運用や基準を設ける必要があります。

ガイドラインに則ったシステムと運用管理規定

医療情報システムの導入、及び、それに伴う情報の外部保存を行う場合の基本的な安全管理の取扱い等については、医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第6.0版:2023年5月)が策定されています。

電子カルテの導入する際には、ガイドラインに則ったシステム運用管理規定を構築する必要があります。

運用管理規定の作成は必須

個別指導においては、電子カルテの運用管理規定を必ず確認され、未作成の場合は作成するよう指導されます。

運用管理規定は、導入される電子保存システムの機能や適応範囲、当該医療機関の管理のあり方によって異なるため、各医療機関ごとに合わせた規定を作成する必要があります。

使用する電子カルテ業者に確認し、関連する各種法令、ガイドラインに基づき作成するようにしましょう。

電子カルテ運用における3つの基準

① 真正性の確保

  • 故意や過失による虚偽入力、書き換え、消去、混同を防止します。
  • 作成における責任の所在を明確にします。

② 見読性の確保

  • 情報の内容を必要に応じて見読可能な状態に容易にできるようにします。
  • 情報の内容を必要に応じて直ちに書面に表示できるようにします。

③ 保存性の確保

  • 法令に定める保存期間内は、復元可能な状態で保存します。

電子カルテ運用における3つの責任

① 説明責任

  • 電子カルテのシステムが基準を満たすことの説明責任

② 管理責任

  • 運用面の管理を行う責任(運用管理規定の作成と遵守)

③ 結果責任

  • 発生した問題点や損失に対する責任

その他の注意事項

  • 一つの診療録に対して複数の入力者がいる場合、各入力者が別々に著名をしなければならない。
  • 診療報酬請求の根拠となる医療行為の実施、及び、当該費用請求のための算定要件事項が電子カルテ上に記載され、電子署名にも対応した仕組みになっている。

診療録(カルテ)に用いる傷病名

診療録に用いる傷病名は、原則として「電子情報処理組織の使用による費用の請求に関して厚生労働大臣が定める事項及び方式並びに光ディスク等を用いた費用の請求に関して厚生労働大臣が定める事項、方式及び企画について」(令和4年4月22日付保発0422第1号)別添3に規定する傷病名を用います。

※別添3については、厚生労働省が運用する「診療報酬情報提供サービス」ホームページの「傷病名・修飾語マスターページに掲載されています。

標準病名マスター作業班」もICD10コードの検索には便利です。

傷病名についての注意事項

  • 現在、用いられている傷病名区分は、次項「傷病名の分類方法等による区分」のとおりです。
  • 疾患の部位、左右の別、慢性か急性かの別などを明記します。
  • 傷病名が複数の場合には一つの欄に連記せず、複数の欄に分けて別々に記載します。
  • 傷病名について疾状名は避けるようにします。
    (例. 発熱、悪寒、CEA高値など)
  • 電子請求の場合、置き換えの可能なものはコード化された標準病名を用いるようにします。

傷病名の分類方法等による区分

① 臨床病名(従来から我が国で用いられている傷病名)

◆ 作成者、作成部署

医師

◆ 概要
  • 医師が従来から用いている病名
  • カルテやレセプトに記載する病名(医療機関内だけで通用する病院内病名を含む)
  • 学会などで定められた病名
  • 医師が学術報告書等で使用する病名
  • 電子レセプトの標準病名にない「ワープロ病名」(テキスト病名、未コード化傷病名)

※病名の要素:①臓器、②病因、③症状・状態など

② ICD病名

◆ 作成者、作成部署

WHO

◆ 概要
  • ICDは、WHO(世界保健機関)憲章に基づいて規定された「国際疾病分類(International Classification of Diseases)」の略
  • もとは「死因統計」を目的とした分類だったが、「疾病統計」にも使用できるように国際的統一が図られたもの
  • 世界各国で集計された死亡や疾病のデータなのでいわゆる「臨床病名」ではない
  • 現在、2019年第11回修正版(ICD-11)が使用されている。

③ 適応疾患

◆ 作成者、作成部署

厚労省、製薬企業

◆ 概要
  • 診療報酬点数表上の告示、通知や医薬品の添付文書で定められている傷病名で、医薬品について保険診療の対象として認められている傷病名を一般的に総称したもの
  • 実際には、通知や添付文書で「適応疾患」という用語が使用されることは少なく、「適応」「効能効果」などと表記されている。
  • 適応には「傷病名」が表記されていることが多いが、「状態」や「症状」などが記載されていることもある。この「状態」や「症状」を病名としてレセプトに記載すると、病名無しとして、返戻や査定の原因になることがある。

④ 標準病名

◆ 作成者、作成部署

MEDIS-DC

◆ 概要
  • 磁気テープ等を用いた請求に関して厚生労働大臣が定める規格、及び方式・別添3
  • 標準病名とは、財団法人医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)が厚労省からの委託を受けて開発した「ICD-10対応電子カルテ用標準病名マスター」(以下「標準病名マスター」)における病名のこと
  • 2002年6月に公開された「第2.1版」からは、「標準病名マスター」と支払基金が公開していた「レセ電算傷病名マスター」との、病名の統一と病名コードのひも付け(対応するものを明示)が行われている。
  • 厚生労働省は、平成26年度の診療報酬改定の際、事務連絡「傷病名コードの統一の推進について」(2024年3月27日改訂)を発出し、20557の同義語病名と傷病名コードで規定する病病名をひも付けた一覧を公開し、原則として傷病名コードに記載されたものを用いるように関係者に促している。

⑤ レセ電算傷病名マスター

◆ 作成者、作成部署

支払基金

◆ 概要
  • レセプト電算処理システムとは、審査支払機関が医療機関から提出された電子レセプト(オンライン・磁気媒体)の受付・審査・支払い等の業務を行うシステムのこと
  • レセ電病名マスターは、レセプト電算処理システムに対応する傷病名で、各々7桁の傷病名コードが附加されている「標準病名」と、すべて「0000999」で記録される「任意病名」がある。
  • 「任意病名」は、標準病名に収載されていない臨床病名のことで、ワープロ病名・テキスト病名とも呼ばれる。
  • 「任意病名」の電子レセプトへの記録は、「未コード化傷病名」として20文字まで使用できる。。
  • 「任意病名」を多用しても返戻・査定の対象にはならないが、審査支払機関から注意文書が来ることがある。

⑥ DPC/PDPSコード病名

◆ 作成者、作成部署

厚労省

◆ 概要
  • DPC/PDPSは、「診断群分類」のこと
  • DPC点数表は、急性期入院医療を対象としたもので、包括払いを導入・普及する目的で2003年4月から導入された。
  • 日本独自の分類で、18の主要診断群(MDC)に分けたあと、基礎疾患「DPCコード病名」(診断群分類番号の上6桁に対応する疾患名)に細分化される。
  • 細分化された基礎疾患は、さらに、年齢、体重、手術のあり・なし、副傷病のあり・ない等の条件によって、最終的な診断群に分岐し、14桁のコードがつけられる。

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