診療報酬の基本となる「基本診療料」と「特掲診療料」この2つの違いは?
診療報酬は医科点数表の解釈に記載している内容に基づいて計算を行います。
その記載内容には大きく分けて「基本診療料」と「特掲診療料」の2つがありますがどのような違いがあるのでしょうか?(医科点数表の解釈H30.4 P45 P277参照)
医科点数表の解釈に記載される「基本診療料」と「特掲診療料」
病院において、外来で来られた患者様、または入院されている患者様、どちらの患者様においても、医療費の計算を行うときには「医科点数表の解釈」という本に記載された内容に基づいて計算を行います。
そして、この計算された医療費が診療報酬として病院の収入になります。
当然ですが、医科点数表の解釈に記載された内容に基づいていない診療は、医療費を請求できません。
それだけ、医科点数表の解釈を確認しながら診療を行っていくことが大切ということです。
さて、この医科点数表の解釈ですが、その内容に目を通してみると、大きく「基本診療料」と「特掲診療料」という項目に分類されていることがわかります。
この基本診療料と特掲診療料とは何を表しているのでしょうか?
基本診療料の説明(抜粋)
基本診療料ですが、医科点数表の解釈では ”基本診療料の性格と内容” として長く難しく、そして分かりづらく記載してあります。
とっても頭が良い人が考えられたのでしょうが、普通の病院で働く一般の医療スタッフが簡単に理解できる内容ではありません。
毎回、目を通すたびにもっと分かりやすい文章にならないのかなぁと思うのですが・・・。
とりあえず、一部を抜粋してみました。
基本診療料は、初診、再診及び入院診療の際(特に規定する場合を除く。)に原則として必ず算定できるのであって、仮に簡単な診療行為を全く行わない場合においても所定の点数を算定できるのものである。例えば、初診料は282点であり、初診の際に算定できるのであるが、初診の際に診察だけで終わり、検査も注射もしなかった場合においても、282点として算定できる。
また、逆に基本診療料として一括して支払われる簡単な診療行為を何回やっても、何種類やっても基本診療料の所定点数しか算定できない。
医科点数表の解釈
これを、個人的に簡単な解釈に書き換えると、下のようになります。
「基本診療料は、初診でも再診でも入院だとしても、とりあえず患者様がいれば必ず算定できる医療費ですよ~。仮に、初診の場合に3分ぐらい軽く話をして終わっても、1時間ぐらい親身に話を聞いたとしても算定できる金額は一緒ですよ~。」
ちょっと適当な解釈すぎるかもしれませんが、このように患者様が受診されたり入院されることで、基本的に算定できる医療費が「基本診療料」だと考えると、とてもわかりやすいです(医科点数表の解釈を作成した偉い人たちが見たらすごく怒るかもしれません。ごめんなさい。)
基本診療料 = 基本的に算定できる医療費
特掲診療料の説明(抜粋)
それでは、次に特掲診療料ですが、こちらも医科点数表の解釈に ”特掲診療料の性格と内容” として記載してあります。
こちらも一部を抜粋します。
特掲診療料は、特殊な診療行為についての費用であるが、基本診療料が基本的な医療行為及び通常初診時、再診時又は入院時に行われる基本的な診療行為に対する費用であるのに対し、基本診療料として、一括支払うことが妥当でない特別の診療行為に対して個別的な評価をなし、個々に点数を設定し、それらの診療行為を行った場合は、個々にそれらの費用を算定することとしているのである。
特掲診療料に掲げられている診療行為を行った場合は、特に規定されている場合を除き、基本診療料と特掲診療料とをあわせて算定する。
これを、個人的に簡単な解釈に書き換えると、下のようになります。
「特掲診療料は、それぞれ個別に費用を算定していいですよ~。特掲診療料を算定する場合には、基本診療料と特掲診療料とを合計して算定してくださいね~。」
というわけで、特掲診療料はそれぞれの医療行為に費用が設定されていて、その医療行為を行った場合には、その分の費用を基本診療料に足して医療費を計算することになります。
特掲診療料 = 追加で行った医療行為の費用
「基本診療料」がカラオケ屋さんで「特掲診療料」はサイドメニュー!!
「基本診療料」は基本的に算定できる医療費で、「特掲診療料」は追加で行った医療行為に対して算定される医療費です。
分かりやすいとは思いますが、それでもまだ意味が分からないと言われる方もいらっしゃるかもしれません。
そのような方のために「カラオケ屋さん」を例にして説明しようと思います。
カラオケ屋さんでは、「1時間○○円」というふうに金額が決められています。
これって基本の料金であって、何曲歌おうが料金は変わりません。
このカラオケ屋さんでの基本料金が、病院では「基本診療料」と呼ばれているものになります。
また、カラオケ屋さんにいる間に ”ドリンク” や ”ポテト” などのサイドメニューを頼むことがあります。
これって、部屋代の「1時間○○円」には含まれていませんよね。
「ドリンク○○円」・「ポテト○○円」というふうに別の料金になっています。
このドリンクやポテトのようなサイドメニューが、病院では「特掲診療料」と呼ばれているものになります。
カラオケ屋さんの基本料金 = 基本診療料
カラオケ屋さんのサイドメニュー = 特掲診療料
カラオケ屋さんの料金はこんな感じ!!
カラオケ屋さんを1時間利用し、ドリンクとポテトを注文した。
- 1時間 1,000円 (基本料金)
- ドリンク 500円 (サイドメニュー)
- ポテト 300円 (サイドメニュー)
合計 1,800円
病院の医療費はこんな感じ!!
病院に行って診察を受け、胸部レントゲンの写真を撮った。
- 診察 2,820円 (基本診療料)
- 胸部レントゲン 2,100円 (特掲診療料)
合計 4,920円
基本診療料の項目
医科点数表の解釈に「基本診療料」は記載されていますが、その具体的な項目は以下に記載されたものになります。
初診料・再診料
- 初診料
- 再診料
- 外来診療料
- オンライン診療料
入院料等
入院基本料
- 一般病棟入院基本料
- 療養病棟入院基本料
- 結核病棟入院基本料
- 精神病棟入院基本料 など
入院基本料等加算
- 総合入院体制加算
- 診療録管理体制加算
- 看護配置加算
- 療養病棟療養環境加算
- 栄養サポートチーム加算
- 退院支援加算 など
特定入院料
- 救命救急入院料
- 回復期リハビリテーション病棟入院料
- 緩和ケア病棟入院料
- 認知症治療病棟入院料 など
特掲診療料の項目
医科点数表の解釈に記載されている「特掲診療料」は基本診療料に比べ数多くあり、またその医療行為ごとに分類されています。
医学管理等
病気などの管理、指導に関する項目
- 特定疾患療養管理料
- 特定疾患治療管理料
- ウイルス疾患指導料
- 特定薬剤治療管理料
- 悪性腫瘍特異物質治療管理料 など
在宅医療
在宅への往診や訪問に関する項目
- 往診料
- 在宅患者訪問診療料
- 在宅患者訪問看護指導料
- 在宅自己注射指導管理料
- 酸素ボンベ加算 など
検査
血液検査、内視鏡、心電図、脳波などの検査に関する項目
- 尿中一般物質定性半定量検査
- 糞便検査
- 血液化学検査
- 心電図検査
- 超音波検査 など
画像診断
レントゲン検査、CT、MRIなどの検査に関する項目
- 透視診断
- 写真診断
- 撮影
- コンピューター断層撮影(CT撮影)
- 磁気共鳴コンピューター断層撮影(MRI撮影) など
投薬
薬の調剤や処方に関する項目
- 調剤料
- 処方料
- 薬剤
- 特定保険医療材料
- 処方箋料 など
注射
点滴などの注射に関する項目
- 皮内、皮下及び筋肉内注射
- 静脈内注射
- 動脈注射
- 点滴注射
- 中心静脈注射 など
リハビリテーション
リハビリに関する項目
- 心大血管疾患リハビリテーション料
- 脳血管疾患等リハビリテーション料
- 廃用症候群リハビリテーション料
- 運動器リハビリテーション料
- 呼吸器リハビリテーション料 など
精神科専門療法
精神療法に関する項目
- 精神科電気痙攣療法
- 入院精神療法
- 認知療法、認知行動療法
- 心身医学療法
- 精神科作業療法 など
処置
傷ややけどの処置、骨折や捻挫時のギプス固定に関する項目
- 創傷処置
- 熱傷処置
- 絆創膏固定術
- 摘便
- ドレーン法 など
手術
手術に関する項目
- 創傷処理
- 皮膚切開術
- デブリードマン
- 四肢切断術
- 減圧開頭術 など
麻酔
麻酔や痛みに対するブロック療法に関する項目
- 静脈麻酔
- 硬膜外麻酔
- 脊椎麻酔
- 神経ブロック
- トリガーポイント注射 など
放射線治療
病気に対する放射線を使った治療に関する項目
- 放射線治療管理料
- 体外照射
- 全身照射
- 血液照射
- 密封小線源治療 など
病理診断
組織や細胞の診断に関する項目
- 病理組織標本作成
- 電子顕微鏡病理組織標本作成
- 免疫染色
- 迅速細胞診
- 細胞診 など