C型肝炎ウイルス(HCV)|検査の基準値
C型肝炎ウイルス(HCV)の定義
C型肝炎ウイルス(HCV:Hepatitis C Virus)は、肝炎を引き起こすウイルスの一種で、主に血液を介して感染します。
肝炎は初期症状はありませんが、慢性化しやすく、長期間にわたり肝臓に炎症を引き起こします。
そして、長い経過のうちに肝硬変や肝がんへ進行してしまうこともあります。
世界と日本のC型肝炎ウイルス(HCV)の現状
世界のC型肝炎ウイルス感染者は、約5,800万人(WHO, 2022)とされ、日本では約100~150万人がC型肝炎ウイルスに感染しているとされています。
また、肝がんの原因の約70%がC型肝炎ウイルスによるものとされています。
WHOではで、2030年までにC型肝炎ウイルスを根絶する目標を掲げており、早期発見と治療が重要視されています。
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染経路
主な感染経路は血液を介した感染です。
- 輸血・血液製剤(1989年以前の非加熱血液製剤による感染が多い)
- 注射器の共用(薬物乱用者間での針の共用)
- 医療事故(医療従事者が針刺し事故で感染)
- 刺青・ピアス(不適切な衛生管理)
- 母子感染(母親がHCV陽性の場合、出産時に感染する可能性がある)
- 空気感染
- 飛沫感染
- 日常生活での接触(握手、食器の共用、入浴など)
C型肝炎ウイルス(HCV)の診断方法
HCVの診断には以下の検査が用いられます。
HCV抗体検査 | HCV感染の有無をスクリーニング |
HCV RNA検査 | ウイルスの存在を確認(PCR法) |
HCV遺伝子型検査 | ウイルスの遺伝子型を特定(治療方針に影響) |
肝機能検査(AST、ALT、γ-GTPなど) | 肝臓の状態を評価 |
C型肝炎ウイルス(HCV)の検査と基準値
C型肝炎ウイルス(HCV)の検査にはいくつかの種類があり、それぞれ基準値が異なります。
① HCV抗体(HCV Ab)
基準値(陰性) | 検出されない(-) |
陽性の場合 | 過去または現在HCVに感染している可能性がある |
HCV感染の有無を調べるスクリーニング検査です。
過去に感染して治癒した場合であっても、陽性になることがあります。
② HCV RNA(核酸増幅検査:PCR法など)
基準値(陰性) | 検出されない |
陽性の場合 | 現在、HCVに感染している(ウイルスが体内に存在する) |
血中のHCVの存在を判定する検査です。
主に、C型慢性肝炎患者のインターフェロン(IFN)治療の効果判定をするために行います。
③ HCV定量(HCV RNA量)
基準値 | 検出限界未満(通常 1.2 Log IU/mL 未満) |
測定範囲 | 100~100,000,000 IU/mL(検査方法による) |
血中のHCVの量を調べる検査であり、ウイルス量が多いほど治療の必要性が高い場合があります。
C型慢性肝炎患者の治療方針の決定、インターフェロン(IFN)治療効果の判定、予後の推定などを目的に行われます。
④ HCV遺伝子型(HCV genotype)
HCVを数種類の遺伝子型(ジェノタイプ)に分類する検査で、通常は検査することはなく、基準値もありません。
C型慢性肝炎患者のインターフェロンの治療効果を予測することができます。
C型肝炎ウイルス(HCV)の症状と治療法
C型肝炎ウイルス(HCV)の症状
① 急性肝炎(感染初期)
感染から数週間~数ヶ月後に以下の症状が現れることがあります。
- 発熱、倦怠感
- 食欲不振、吐き気
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
多くの場合、自覚症状がないまま進行するため、感染したことに気づかないことが多いです。
② 慢性肝炎(6か月以上続く)
急性肝炎の70~80%は慢性化し、持続的な肝炎を引き起こします。
慢性化しても自覚症状に乏しいですが、疲れやすくなったり肝機能障害がみられるようになります。
③ 肝硬変・肝がん
慢性肝炎の長期的な炎症によって、肝臓の線維化が進行(肝硬変)します。
そして、肝硬変の約20~30%が肝がんへ進行します。
C型肝炎ウイルス(HCV)の治療法
① インターフェロン療法(過去の治療法)
C型肝炎ウイルス(HCV)への治療は、以前はインターフェロン(IFN)とリバビリンを用いた治療が主流でした。
ただ、副作用の出現が多く、治療成功率が50~70%と低かったです。
② 直接作用型抗ウイルス薬(DAAs:Direct-Acting Antivirals)
現在の治療法の主流は、DAA(直接作用型抗ウイルス薬)です。
DAA(直接作用型抗ウイルス薬)は経口薬で治療期間が短く、高い治癒率(95%以上)を誇ります。
- ソホスブビル(Sofosbuvir)
- レジパスビル(Ledipasvir)
- グレカプレビル/ピブレンタスビル(Glecaprevir/Pibrentasvir) など
- 治療期間が8~12週間
- 副作用が少ない
- HCVの遺伝子型に応じた薬を選択可能