免疫血清検査

BNP/NT-proBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド/BNP前駆体N端フラグメント)|検査の基準値

クワホピ

BNP/NT-proBNPの基準値

  • BNPおよびNT-proBNPの値は加齢、腎機能、肥満、その他の疾患によって変動することがあります。
  • 数値はあくまで目安であり、診断には臨床症状や他の検査結果と総合的に判断されます。

BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の基準値

数値リスク
正常範囲0~18.4 pg/mL一般的な基準値
心不全の疑い100 pg/mL以上
200 pg/mL以上
400 pg/mL以上
心不全の可能性あり
心不全のリスクが高い
心不全の可能性が強い

NT-proBNP(BNP前駆体N端フラグメント)の基準値

数値リスク
正常範囲(75歳未満)
正常範囲(75歳以上)
125 pg/mL未満
450 pg/mL未満
一般的な基準値
心不全の疑い125 pg/mL以上(75歳未満)450 pg/mL以上(75歳以上)
900 pg/mL以上
1800 pg/mL以上
心不全の可能性あり
心不全の可能性あり
心不全のリスクが高い
重度の心不全の可能性が高い

BNP/NT-proBNPが高値の場合

BNP/NT-proBNPが高値の場合には、以下のことが考えられます。

  • 慢性心不全(重症では高値を示す)
  • 心筋梗塞
  • 慢性腎不全
  • 本態性高血圧

BNP/NT-proBNPの異常値への対応

BNP/NT-proBNPが基準値でない場合には、以下のことに取り組むことが望ましいです。(医師への確認が必要)

  • 生活習慣の是正(血漿BNPの上昇は心臓への負荷の増大を意味する)
  • 肥満の是正(過食防止:特に夜間の間食を禁止する)
  • 禁煙
  • 適度な運動(散歩程度)、充分な睡眠
  • アルコールの多飲を禁止
  • 充分なビタミン補給
  • ストレスの緩和

BNP/NT-proBNPの定義

BNP(brain natriuretic pepride)

脳性ナトリウム利尿ペプチド

NT-proBNP

BNP前駆体N端フラグメント

BNPは、主に心室で生合成されるペプチドホルモンです。

心室負荷や心室肥大・心室虚血などの心不全により分泌が亢進します。

BNP・NT-proBNPは、心室の負荷の有無やその程度を把握することのできる鋭敏な心機能マーカーです。

主に心疾患の重症度の把握や治療効果の判定ために行われます。

心筋より産生されたproBNPはコリン酵素分解により、BNPとNT-proBNPに分解されます。

NT-proBNPはBNPに比べて体内での半減期が長く、対外では安定した物質です。

心筋 ⇒ proBNP ⇒  BNP ・ NT-proBNP

BNPとNT-proBNPの違い

① 生成と分泌

BNPは、心筋細胞によって合成される 前駆体(proBNP) から分解されることで、以下の2つの分子に分かれます。

  • BNP(活性型)
    • 生理活性を持ち、血管拡張や利尿作用、ナトリウム排泄の促進を通じて血圧を下げる
  • NT-proBNP(不活性型)
    • 生理活性を持たず、代謝的に安定で半減期が長い

② 半減期とクリアランス

BNPNT-proBNP
生理活性ありなし
半減期約20分約1~2時間
クリアランス(排出経路)腎臓・受容体分解主に腎臓
測定の安定性低め(変動しやすい)高め(長時間安定)

BNPは主に受容体を介して分解され、NT-proBNPは主に腎臓を通じて排出されるため、腎機能が低下するとNT-proBNPが上昇しやすい という特徴があります。

③ BNPとNT-proBNPはどちらを使うべきか?

BNPとNT-proBNPは、それぞれ以下のような特徴があります。

BNPNT-proBNP
半減期が短く、急性変化を捉えやすい半減期が長く、安定した指標として有用
腎機能の影響を受けにくい腎機能低下時に上昇しやすい
急性心不全の診断に適している慢性心不全の管理・予後予測に適している

病院や検査環境によって使い分けられますが、「急性心不全の評価にはBNP」 「慢性心不全や予後予測にはNT-proBNP」が推奨されます。

BNP/NT-proBNPの臨床的意義

① 心不全の診断と重症度評価

BNPやNT-proBNPは、心室の壁にかかるストレス(心負荷)に応じて分泌量が増加するため、心不全の診断・重症度評価に有用です。

心不全の可能性
(ガイドライン基準)
BNP
(pg/mL)
NT-proBNP
(pg/mL)
低リスク(心不全の可能性低い)< 100< 300
心不全の可能性あり≥ 100≥ 300
急性心不全が強く疑われる≥ 400≥ 1800
  • BNPが100 pg/mL以上、NT-proBNPが300 pg/mL以上なら心不全を疑います。
  • 急性心不全ではBNPが400 pg/mL以上、NT-proBNPが1800 pg/mL以上になることが多くなります。

② 予後予測

  • 高いBNP/NT-proBNP値の場合は、死亡リスクや再入院のリスクが高いことを示唆します。
  • 値が下がれば治療が奏功している可能性があることを示します。

③ 他の疾患との鑑別

BNP/NT-proBNPの上昇は心不全以外の疾患でも見られるため、他の検査と併用することが重要です。

BNP/NT-proBNP上昇の原因代表的な疾患
心不全収縮不全(HFrEF)、拡張不全(HFpEF)
心筋梗塞急性冠症候群(ACS)
肺高血圧肺塞栓症、COPD、間質性肺疾患
腎不全慢性腎不全(特にNT-proBNP)
高齢加齢による上昇(特にNT-proBNP)

記事URLをコピーしました
目次へ