区分の概要

医療療養病床への「医療区分・ADL区分」の導入と療養病棟入院基本料

クワホピ

医療療養病床では、入院されている患者様の状態を『医療区分・ADL区分等に係る評価票』を用いて評価しています。

この医療区分・ADL区の導入によって医療療養病床では、入院されている患者様の状態を詳細に把握できるようになり、入院基本料も9段階に分類されるようになりました。

この記事では、医療区分・ADL区分が導入されることになった経緯、また、医療区分・ADL区分が導入されることによって、医療療養病床がどのように変化したのかを解説していきます。

この記事で学ぶこと
  • 医療区分・ADL区分導入前の療養病棟の状態
  • 医療区分・ADL区分導入後の療養病棟の状態
  • 医療区分・ADL区分を用いた入院基本料の9段階の分類

医療区分・ADL区分の導入による療養病棟の変化をしっかり理解しましょう。

医療療養病床への「医療区分・ADL区分」の導入

現在、療養病床では、患者様の病状や状態を「医療区分・ADL区分」を用いて評価しています。

この医療区分・ADL区分は以前から用いられていたものではなく、平成18年7月より用いられるようになったものです。

ちなみに、医療区分・ADL区分による患者様の病状の評価は療養病床でのみ行われていることであり、急性期病床や回復期病床などの他の病床では行われていません。

なぜ、療養病床だけが医療区分・ADL区分を使って患者様を評価しているのでしょうか?

医療区分・ADL区分を導入する前の療養病床

現在、医療療養病床では、患者様の病状や症状の状態を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」という評価票を用いてチェックをするように定められています。

そして、その評価票の中身によって患者様の医療費が変化する仕組みになっており、病院の収益も患者様の状態によって増減する形になっています。

ただ、以前の療養病床では「医療区分・ADL区分等に係る評価票」は用いる必要はなく、患者様の状態に関わらず、包括性(ほうかつせい)として一定の入院費を請求できる仕組みになっていました。

そのため、入院の必要性のない軽症の患者様であっても、簡単に入院させている医療療養病床が多くありました。

その結果、あまり医療や看護の必要性のない、手のかからない患者を多く入院させ、病院の収益を増やす経営の方法をとっていた療養型の病院が多く存在していました。

そのような状態であったため、世間からは「療養病床は社会的入院の温床である」というイメージをもたれていました。

以前の療養病床は、入院の必要性がなくても入院をしている社会的入院の患者が多く見られました。すべての病院ではないのでしょうが、そのような患者が多かったのは事実です。

医療区分・ADL区分を用いた9段階の入院基本料

社会的入院の温床であるとされていた療養病床ですが、さすがにこの状態ではいけないと状況の改善が図られました。

そして、平成18年7月より導入されたのが「医療区分とADL区分を用いた9段階の入院基本料の分類制度」です。

医療区分は患者様の医療必要度ごとに医療区分1~3で評価され、ADL区分は患者様の介護必要度ごとにADL区分1~3で評価されます。

そして、9段階の入院基本料は、医療区分とADL区分のそれぞれの3段階を組み合わせたもので分類されるようになっています。

この9段階の入院基本料は1日の入院費用に関わるものですが、患者様の医療・介護必要度が高いほど入院費用も高くなるように設定されています。

医療区分1~3の評価

医療区分は、患者様の医療必要度ごとに医療区分1~3で評価され、医療の必要度が高いほど医療区分3になるように基準が設けられています。

医療の必要度低い高い
医療区分医療区分1医療区分2医療区分3

ADL区分1~3の評価

ADL区分は、患者様の介護必要度ごとにADL区分1~3で評価され、介護の必要度が高いほどADL区分3になるように基準が設けられています。

介護の必要度低い高い
ADL区分ADL区分1ADL区分2ADL区分3

医療区分・ADL区分を用いた9段階の入院基本料の分類制度

医療区分1~3とADL区分1~3の組み合わせを表にしたものが下のものになります。

医療区分1
医療区分2
医療区分3
ADL区分3入院基本料G
医療区分1
ADL区分3
入院基本料D
医療区分2
ADL区分3
入院基本料A
医療区分3
ADL区分3
ADL区分2入院基本料H
医療区分1
ADL区分2
入院基本料E
医療区分2
ADL区分2
入院基本料B
医療区分3
ADL区分2
ADL区分1入院基本料I
医療区分1
ADL区分1
入院基本料F
医療区分2
ADL区分1
入院基本料C
医療区分3
ADL区分1

表を見て分かるように、入院基本料はA~Iまでの9段階になっています。

この段階は、入院基本料Iから入院基本料Aになっていくほど診療報酬(入院費用)は高くなっていきます。

そのため、医療療養病床が収益を増加させるためには、入院基本料Aに近い患者様を多く入院させることが必要になります。

入院基本料が低い入院基本料が高い
入院基本料I
医療区分1
ADL区分1
入院基本料A
医療区分3
ADL区分3

医療区分1・ADL区分1の患者様よりも、医療区分3・ADL区分3の患者様の方が入院基本料は高くなります。

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医療区分・ADL区分の導入後の療養病棟の変化

平成18年7月から導入された医療区分・ADL区分によって、医療療養病床では患者様の状態によって入院基本料が日々変化することになりました。

入院基本料は9段階で決められ、医療必要度・介護必要度が高い患者様ほど大きなものになります。

そのため、経営を安定させ収益を増やすためには医療重症度の高い患者様を入院させなければならなくなり、それと同時に、医療や介護の必要性が低い患者による社会的入院が増えるほど、病院の収益は落ち込み経営が苦しくなることになってしまいました。

この制度の導入後、医療療養病床を持つ病院では、病院の収益を増加させるため医療重症度の高い患者様を入院させるようになりました。

そして、そこで働く看護師やその他のスタッフは、必然的に質の高い医療を求められることになりました。

以前の療養病床

「療養病床は社会的入院の温床」

誰が入院しても包括性で収益は変化しない

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平成18年7月からの療養病床

「医療区分・ADL区分を用いた9段階の入院基本料」

患者様の医療区分・ADL区分で病床の収益が変化する

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病院の収益を増やすためには…

「医療重症度の高い患者様を入院させる必要性」

医療重症度の高い患者様を入院させるためには?

⇩⇩⇩⇩

病院の”質”を高める

⇩⇩⇩⇩

質の高い医療・スタッフのスキルアップ

療養病床に対して質の高い医療が求められるようになったということです。

「医療区分・ADL区分」の導入と療養病棟入院基本料|まとめ

社会的入院が多かった医療療養病床では、平成18年から医療区分・ADL区分が導入されたことによって、大きな変革がもたらされました。

なぜ療養病棟に医療区分・ADL区分が導入されたのか、導入されたことによって両々病棟や入院基本料がどのように変化したのかをしっかり理解しておきましょう。

「医療区分1~3・ADL区分1~3・9段階の入院基本料」は、医療療養病床においてとても重要な項目になります。

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