ADL区分の評価

「医療区分・ADL区分等に係る評価票」におけるADL区分の評価

クワホピ

ADL区分の概要

医療療養病床では、「医療区分・ADL区分等に係る評価票」を用いて入院されている患者様の介護必要度の評価を行い、この介護必要度の結果を表したものがADL区分になります。

ADL区分は、療養病棟入院基本料を算定する医療療養病床の入院料を決定するために必要となるものであるため、評価のながれに沿った適切な評価が必要になります。

医科点数表の解釈においての記載

医科点数表の解釈において、ADL区分は以下のように評価するように記載されています。

当日を含む過去3日間の全勤務帯における患者に対する支援のレベルについて、下記の4項目(a.ベッドの可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用)に0~6の範囲で最も近いものを記入して合計する。新入院(転棟)の場合は、入院(転棟)後の状態について評価する。

医科点数表の解釈

ADL区分は医科点数表の解釈に記載されている内容に基づいて評価する必要があります。

ADL区分の3分類と4つの評価項目

ADL区分は、ADL区分1、ADL区分2、ADL区分3の3段階に分類され、その分類は患者様のADL(日常生活動作)の状態を確認することで行われます。

確認する項目には「ベッド上の可動性・移乗・食事・トイレの使用」の4つの項目があり、それぞれの項目ごとに必要な支援のレベルを評価することによって、0~6点の範囲で点数化します。

そして、4項目の合計点0~24点によって、ADL区分1、ADL区分2、ADL区分3のいずれかに分類されます。

ちなみに、ADL区分3になるほど患者様の介護必要度は高くなります。

ADL区分は「ベッド上の可動性・移乗・食事・トイレの使用」の4つの項目で評価されます。そして、その評価の結果によってADL区分1、ADL区分2、ADL区分3のいずれかに分類されます。

ADL区分の評価のながれ

ADL区分は、患者様の介護必要度を「ベッド上の可動性・移乗・食事・トイレの使用」の4つの項目について評価していきます。

評価のながれ①:各項目の評価内容を確認

各項目の評価の内容は表にまとめた通りです。

項目評価の内容
ベッド上の可動性横になった状態からの動き
・寝返り
・起き上がり
・身体の位置の調整など
移乗ベッドからイスや車イスへの移乗
・座る
・立ち上がる
※浴槽や便座への移乗は除く
食事食べたり、飲んだりの状態
※上手、下手に関係なく
※経管や経静脈栄養も含む
トイレの使用トイレの使用の状態
・排泄後の始末
・おむつの替え
・人工肛門またはカテーテルの管理
・衣服を整える
※ポータブルトイレ、便器、尿器を含む
※移乗は除く

評価のながれ②:評価内容の支援レベルを0~6点の範囲で評価

各項目の評価内容について、患者様に必要な支援レベルを0~6点の範囲で評価していきます。

それぞれの評価については、医科点数表の解釈において「当日を含む過去3日間の全勤務帯における患者に対する支援のレベルについて、最も近いもの」と記載があるので、当日・昨日・一昨日の状態を確認し、最も当てはまる点数を記載します。

このとき、新入院・転棟の場合には「昨日・一昨日」の状態を評価できないので、入院・転棟後の状態について評価を行います。

ADL区分の評価の注意点
  • 当日を含む過去3日間の全勤務帯における患者に対する支援のレベルについて、最も近いもの
  • 当日・昨日・一昨日の状態を確認して、最も当てはまる点数
  • 新入院・転棟の場合には、入院・転棟後の状態について評価

点数状態支援のレベル
自立・手助け、準備、観察は不要
・手助け、準備、観察が1~2回のみ
準備のみ・物や用具を患者の手の届く範囲に置くことが3回以上
観察・見守り、励まし、誘導が3回以上
部分的な援助・動作の大部分(50%以上)は自分でできる
・四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支えない援助を3回以上
広範な援助・動作の大部分(50%以上)は自分でできる
・四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支える援助を3回以上
最大の援助・動作の一部(50%未満)しか自分でできない
・四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支える援助を3回以上
全面依存・まる3日間、すべての面で他者が全面援助した
・及び、本動作は一度もなかった場合

当日・昨日・一昨日の状態を確認する必要があることを理解しておきましょう。

評価のながれ③:評価した点数の合計点を算出する

評価に用いる4項目は、ADLの状態によってそれぞれ0~6点の範囲で点数化されます。

そして、評価した4項目の点数を合計した点数0~24点を算出します。

ベッド上の可動性0 ~ 6点
移乗0 ~ 6点
食事0 ~ 6点
トイレの使用0 ~ 6点
4項目の合計点数0 ~ 24点

評価のながれ④:4項目の合計点数をもとにADL区分が決定

4項目の合計点数(0~24点)によってADL区分が決定します。

ADL区分1ADL区分2ADL区分3
介護の必要度(点)0~1011~2223~24
状態自立寝たきり

介護必要度を評価した0~24点の点数の幅は、点数が高くなるほど手厚い介護が必要なことを意味しています。

そして、それと同時に介護必要度の点数が高い(=ADL区分が高い)ほど、患者様は寝たきりの状態に近づくことを意味しています。

ADL区分の評価のチェックポイント

前述した通り、ADL区分の評価は4つの評価項目「a.ベッド上の可動性」「b.移乗」「c.食事」「d.トイレの使用」について評価を行い、各項目を0~6点(自立から全面依存まで)の範囲で点数をつけ、その合計点数でADL区分を分類します。

「医療区分・ADL区分等に係る評価票」におけるADL区分の評価

チェックポイント①:各項目の評価期間に注意する

ADL区分の各項目の評価にあたっては、医科点数表の解釈において「当日を含む過去3日間の全勤務帯における患者に対する支援のレベルについて、最も近いもの」と記載があります。

そのため、項目の評価をする際には、当日を含む3日間(当日・前日・前々日)の全勤務帯の状態を確認する必要があります。

なお、新入院(転棟)の場合は、前日と前々日の評価ができないため入院後の状態について評価を行います。

ADL区分の各項目の評価期間
  • 当日を含む3日間(当日・前日・前々日)の全勤務帯
  • 新入院(転棟)の場合は、入院後の状態を評価

チェックポイント②:支援レベルに最も近い点数で評価する

ADL区分の各項目の評価にあたっては、医科点数表の解釈において「当日を含む過去3日間の全勤務帯における患者に対する支援のレベルについて、最も近いもの」と記載があります。

ここで注意が必要なことは、支援のレベルは最も近いものであって、最も重いものではないという点です。

そのため、一瞬だけ支援のレベルが重くなったとしても、その評価点をつけるわけではなく、あくまでも3日間の支援レベルを確認した上での評価をしなくてはいけません。

ADL区分の各項目の評価点数
  • 評価項目をa~dについて、それぞれ0~6点で評価
  • 最も重いレベルの点数ではなく3日間の評価で最も近いもの

各項目の評価を複数のスタッフで行う場合、点数のつけ方に差が出てしまうため、常日頃から介護の支援レベルについての認識を統一できるように確認しておくことが大切です。

チェックポイント③:フローチャートで適切な評価をする

各項目の評価点は0~6点の範囲で、「自立:0点、準備のみ:1点、観察:2点、部分的の援助:3点、広範な援助:4点、最大の援助:5点、全面依存:6点」と定められています。

点数状態支援のレベル
自立・手助け、準備、観察は不要
・手助け、準備、観察が1~2回のみ
準備のみ・物や用具を患者の手の届く範囲に置くことが3回以上
観察・見守り、励まし、誘導が3回以上
部分的な援助・動作の大部分(50%以上)は自分でできる
・四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支えない援助を3回以上
広範な援助・動作の大部分(50%以上)は自分でできる
・四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支える援助を3回以上
最大の援助・動作の一部(50%未満)しか自分でできない
・四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支える援助を3回以上
全面依存・まる3日間、すべての面で他者が全面援助した
・及び、本動作は一度もなかった場合

上記の表に当てはめた評価をしやすいように、フロチャートが記載されているので、フロチャートを用いて適切な評価を行うようにします。

「医療区分・ADL区分等に係る評価票」におけるADL区分の評価

チェックポイント④:評価の合計点によってADL区分が決定する

各項目の評価をした後は、その合計点によって当日のADL区分が決定します。

評価項目abcdの4項目はそれぞれ ”0~6点” なので、その合計は ”0~24点” になります。

ADL区分評価点数
ADL区分10 ~ 10点
ADL区分211 ~ 22点
ADL区分323 ~ 24点

ADL区分の評価例

仮に、1~3日目の各項目の評価が下の画像のような状態だったとします。

「医療区分・ADL区分等に係る評価票」におけるADL区分の評価

評価例①:1日目のADL区分

1日目のADL区分は以下のようになります。

「医療区分・ADL区分等に係る評価票」におけるADL区分の評価

1日目の各項目の評価点は、a:2点、b:2点、c:2点、d:2点で合計8点です。

合計点数が8点であり、0~10点の範囲に含まれるので「ADL区分1」になります。

評価例②:2日目のADL区分

2日目のADL区分は以下のようになります。

「医療区分・ADL区分等に係る評価票」におけるADL区分の評価

2日目の各項目の評価点は、a:4点、b:4点、c:4点、d:4点で合計16点になります。

合計点数が16点であり、11~22点の範囲に含まれるので「ADL区分2」になります。

評価例③:3日目のADL区分

3日目のADL区分は以下のようになります。

「医療区分・ADL区分等に係る評価票」におけるADL区分の評価

3日目の各項目の評価点は、a:6点、b:6点、c:6点、d:6点で合計24点になります。

合計点数が24点であり、23~24点の範囲に含まれるので「ADL区分3」になります。 

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