療養病床における褥瘡対策の推進(H30改定)
平成30年度の診療報酬改定においての「療養病床における褥瘡対策の推進」について説明します。
褥瘡評価実施加算の変更
療養病床における褥瘡に関する評価を、入院時から統一した指標で継続的に評価し、褥瘡評価実施加算にアウトカム評価を導入するとともに、名称を変更する。
[現行]
◆褥瘡評価実施加算(算定要件)
入院患者が別に厚生労働大臣が定める状態(※ADL区分3)の場合は、当該基準に従い、当該患者につき、褥瘡評価実施加算として、1日につき15点を所定点数に加算する。
[改定後]
◆褥瘡評価実施加算(算定要件)
当該病棟に入院している患者のうち、別に厚生労働大臣が定める状態(※ADL区分3)の患者に対して、必要な褥瘡対策を行った場合に、患者の褥瘡の状態に応じて、1日につき次に掲げる点数を所定点数に加算する。
- イ 褥瘡対策加算1 15点
- ロ 褥瘡対策加算2 5点
[留意事項]
入院時の褥瘡評価で用いているDESIGN-R分類を用いて入院患者の褥瘡の状態を確認し、治療及びケアの内容を踏まえ毎日評価し、以下により算定する。
ア 褥瘡対策加算1については、入院後暦月で3月を超えない間、若しくは新たに当該加算に係る評価を始めて暦月で3月を超えない間、又は褥瘡対策加算2を算定する日以外の日において算定する。
イ 褥瘡対策加算2については、直近2月の実績点(※)が2月連続して前月の実績点を上回った場合であって、当月においてDESIGN-Rの合計点が前月の実績点より上回った日に算定する。
(※)DESIGN-Rの合計点:褥瘡の状態の評価項目のうち「深さ」の項目の点数は加えない当月患者のDESIGN-Rの合計点数
(※)実績点:暦月内におけるDESIGN-Rの合計点が最も低かった日の点数
診療報酬の変更
[現行]
褥瘡評価実施加算 15点
⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩
[改訂]
褥瘡評価実施加算1 15点
褥瘡評価実施加算2 5点
- ADL区分3の患者に対し
- 必要な褥瘡対策を行った場合
- 患者の褥瘡の状態に応じて
- 褥瘡評価実施加算1と褥瘡評価実施加算2を振り分ける
留意事項
- 入院時の褥瘡の評価、状態の確認(DESIGN-R分類)
- 入院後、毎日評価し加算1、2にあてはめる
[褥瘡対策加算1の算定要件]
①入院後、暦月で3月を超えない間
②新たに当該加算に係る評価を始めて、暦月で3月を超えない間
③褥瘡対策加算2を算定する日以外
[褥瘡対策加算2の算定要件]
・直近2月の実績点が2月連続して前月の実績点を上回った場合で
・当月においてDESIGN-Rの合計点が
・前月の実績点より上回った場合
褥瘡対策加算:算定の例
(算定について)
今回の診療報酬改定では、褥瘡の状態に合わせて加算が変更になり、褥瘡の状態が悪化することが継続すると「褥瘡対策加算2」の算定になることになっている。
ADL区分3の状態になってから暦月で3月は「褥瘡対策加算1」で算定できる。
2月連続して褥瘡の状態が悪化した場合、前月の実績点に比較し毎日「褥瘡対策加算1」と「褥瘡対策加算2」の切り替えを行う必要がある。
(パターン1)
※算定日が10月10日の場合
7月、8月、9月は、暦月で3月を超えていないので「褥瘡対策加算1」で算定。
褥瘡の悪化は、7月→8月(悪化)、8月→9月(悪化)なので、2月連続して悪化したことになる。
10月の評価は、9月の実績点の3点と比較する。
9月の実績点:3点 = 10月10日のDESIGN-Rの合計点:3点
褥瘡は悪化していないので「褥瘡対策加算1」で加算可能
(パターン2)
※算定日が10月10日の場合
8月から評価を始めていて、暦月で3月を超えていないので「褥瘡対策加算1」で加算可能。
(パターン3)
※算定日が10月10日の場合
7月、8月、9月は、暦月で3月を超えていないので「褥瘡対策加算1」で算定。
褥瘡の悪化は、7月→8月(悪化)、8月→9月(悪化)なので、2月連続して悪化したことになる。
10月の評価は9月の実績点の3点と比較する。
9月の実績点:3点 > 10月10日のDESIGN-Rの合計点:4点
悪化しているので「褥瘡対策加算2」で加算する
(パターン4)
※算定日が10月10日の場合
7月、8月、9月は、暦月で3月を超えていないので「褥瘡対策加算1」で算定。
褥瘡の悪化は、7月→8月(悪化)、8月→9月(悪化)なので、2月連続して悪化したことになる。
10月の評価は9月の実績点の3点と比較する。
9月の実績点:3点 > 10月9日のDESIGN-Rの合計点:4点
10月9日のDESIGN-Rの合計点は、悪化しているので「褥瘡対策加算2」で加算する
9月の実績点:3点 = 10月10日のDESIGN-Rの合計点:3点
10月10日のDESIGN-Rの合計点は、悪化していないので「褥瘡対策加算1」で加算する
DESIGN-Rの評価
「DESIGN-R」は、褥瘡を以下の項目で評価します。
- 深さ (Depth)
- 滲出液 (Exudate)
- 大きさ (Size)
- 炎症/感染 (Inflammation/Infection)
- 肉芽組織 (Granulation)
- 壊死組織 (Necrotic tissue)
- ポケット (Poket)
それぞれの項目ごとに褥瘡の状態に合わせて点数化し、その合計点で評価をします。
「深さ(Depth)」の項目の点数は合計点には加えないので注意が必要です。
詳細については、下の画像で確認ください。
参考書類(DESIGN-R評価1月分)
DESIGN-Rの毎日の評価と過去3ヵ月の実績点を記入できるように作成してみました。
改定診療報酬点数表参考資料(日本医師会:平成30年4月1日実施)での通達
改定診療報酬点数表参考資料での通達では、褥瘡の評価については以下のようになっています。
「注4」に規定する褥瘡対策加算1及び2は、ADL区分3の状態の患者について、「別紙様式46」の「褥瘡対策に関する評価」を用いて褥瘡の状態を確認し、治療及びケアの内容を踏まえ毎日評価し、以下により算定すること。なお、以下において、「褥瘡対策に関する評価」における褥瘡の状態の評価項目のうち「深さ」の項目の点数は加えない当該患者のDESIGN-Rの合計点数を「DESIGN-Rの合計点」といい、暦月内におけるDESIGN-Rの合計点が最も低かった日の点数を当該月における「実績点」という。また、褥瘡の状態の評価の結果を別添1の2の別紙様式2の「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の所定欄に記載し、治療及び看護の計画を見直した場合には、その内容を診療録等に記載すること。
ADL区分3の状態の患者に対し、”「別紙様式46」を用いて褥瘡の状態を確認”とあるので確認の必要があります。
”治療及びケアの内容を踏まえ毎日評価する”とありますが、「別紙様式46」を使用して毎日評価すると、一人の患者様に1月30枚ほどの「別紙様式46」を作成することになります。
さすがに、そのようなことは考えにくいと思われますので、毎日の評価を診療録に記載するなどの対応と定期的(最低1月1回)な「別紙様式46」を使用した確認を行うことになるかと思われます。
今後、疑義解釈において通達が出る可能性がありますのでご確認ください。