看護師比率(正看護師比率)の計算方法
療養病棟入院基本料の施設基準においては「当該病棟において、看護職員の最小必要数の2割以上が看護師であること」となっています。
このときの”看護師”とは正看護師のことを言い、病棟で勤務している看護職員の中の正看護師の割合が2割以上であることを示しています。
ただ、ここでの看護師の割合は、その病棟に勤務する看護師の人数の割合ではなく、勤務時間数で割合の計算をしなくてはいけません。
また、このときの勤務時間数の合計はその病棟に必要な看護師の時間数で計算する必要があります。
今回は、病棟における看護師比率の計算方法についてまとめていきます。
正看護師と准看護師
病院に勤務する看護職員は、看護師の資格の種類により「看護師」と「准看護師」の2種類に分かれます。
看護師は「正看(せいかん)」、准看護師は「准看(じゅんかん)」と呼ばれます。
- 看護師 ⇒ 正看
- 准看護師 ⇒ 准看
病院に勤務する看護師と准看護師ですが、患者様から見ると同じ看護師であり違いが分かりにくいです。
いったい何が違うのでしょうか?
看護師と准看護士では試験を行う管轄に違いがあり、「看護師」の資格は厚生労働大臣が発行し、「准看護師」の資格は各都道府県知事が発行しています。
ただ、実際の看護業務において看護師と准看護師で業務が異なるかというとその業務に大きな違いはありません。
資格は国家資格であり、看護学校を卒業(卒業見込み)後、看護師の国家試験を受け、それに合格しなければなりません。
資格は国家資格ではなく、准看看護学校を卒業後に、各都道府県が実施する准看護士試験を受け、それに合格しなければなりません。
看護師比率(正看護師比率)
入院基本料の施設基準では「看護師比率」が定められています。
この看護師比率はその病棟に必要な看護師に対する「正看護師」の割合を表したものです。
ただ、この割合はその病棟に勤務している看護師の人数で割合を求めるのではなく、その病棟に必要な看護要員に対する正看護師の割合を求めなくてはいけません。
看護師10人中8人が正看護師 ⇒ 看護師比率80%
※人数の比率だけで計算するのは間違い!!
看護師比率の計算方法
看護師比率の計算は、下の2つの項目を使って計算します。
- その病棟に勤務する正看護師の勤務時間数
- その病棟に必要な看護職員の勤務時間数
看護師比率 = 正看護師の勤務時間数 ÷ 病棟に必要な看護職員の勤務時間数 × 100
仮に、正看護師の勤務時間数が800時間、病棟に必要な看護職員の勤務時間数が1200時間であった場合には、
800 ÷ 1200 × 100 ≒ 66.6
という計算になり、看護師比率は66.6%ということになります。
「正看護師の勤務時間数」の計算
正看護師の勤務時間数は、その月に勤務した正看護師の勤務時間数の合計です。
複数の病棟がある場合には、病棟ごとに分けて計算します。
例. 看護職員6名(正看護師4名 准看護師2名)
- 正看護師1 170時間/月
- 正看護師2 180時間/月
- 正看護師3 160時間/月
- 正看護師4 165時間/月
- 准看護師1 175時間/月
- 准看護師2 160時間/月
正看護師の勤務時間数は、正看護師1~4の1月の勤務時間数を合計したものになります。
170 + 180 + 160 + 165 = 675時間
この場合は、675時間がその月の正看護師の勤務時間数の合計になります。
「病棟に必要な看護職員の勤務時間数」の計算
「病棟に必要な看護職員の勤務時間数」は、その病棟の入院基本料の施設基準を満たすために必要な看護職員の勤務時間数のことで、「必要な月延べ勤務時間数」とも言います。
その病棟に「必要な月延べ勤務時間数」は、以下の計算で求めることができます。
月延べ勤務時間数 = 8hr × 必要看護配置数 × 月日数
※「必要看護配置数」については、”看護配置数の計算方法”で説明していますのでご参照ください。
仮に、その病棟における「必要看護配置数」が10人だったとすると、「月延べ勤務時間数」は以下のように求めることができます。
月延べ勤務時間数 = 8 × 10 × 30 = 2400
2400時間が1か月にその病棟で必要な看護師の勤務時間数になります。
誤った計算方法
看護師比率は、正看護師の割合を計算するので、間違った考え方をしてしまうことがあります。
よくある間違いを例に挙げてみますので、注意しましょう。
正看護師と准看護師の割合で計算してしまう
病棟の看護職員の人員数で正看護師の割合を計算するのは間違いです。
例. 看護職員6名(正看護師4名 准看護師2名)
看護師比率 = 正看護師の人数 ÷ 全体の看護職員の人数 × 100
4 ÷ 6 × 100 ≒ 66.6
看護師比率 = 66.6%
看護師比率は、その病棟の全看護師の人員に対する正看護師の割合ではありません。
「月延べ勤務時間数」をその月の全ての勤務時間数で計算してしまう
看護師比率は、その月にその病棟に必要な看護職員の勤務時間数を使用して計算を行います。
その病棟の全看護職員の勤務時間数を使用すると、看護師比率は小さい値になってしまいます。
例. 看護職員10名(正看護師7名 准看護師3名) 必要な月延べ勤務時間数 1400時間
- 正看護師1 170時間/月
- 正看護師2 180時間/月
- 正看護師3 160時間/月
- 正看護師4 165時間/月
- 正看護師5 165時間/月
- 正看護師6 165時間/月
- 正看護師7 165時間/月
- 准看護師1 175時間/月
- 准看護師2 160時間/月
- 准看護師3 180時間/月
この月の全職員の勤務時間数は、
170+180+160+165+165+165+165+175+160+180=1850
この月の正看護師の勤務時間数は、
170+180+160+165+165+165+165=1335
この数値で計算を行うと、
看護師比率 = 正看護師の勤務時間数 ÷ 全体の看護職員の勤務時間数 × 100
1335 ÷ 1850 × 100 ≒ 72.1
看護師比率 = 72.1%
となってしまいます。
これを、「必要な月延べ勤務時間数1400時間」で計算し直すと、
1335 ÷ 1400 × 100 ≒ 95.3
看護師比率 = 95.3%
となり、全く違う結果になります。
看護師比率の計算例
「看護師比率」は、その病棟に必要な看護師の勤務時間数に対する正看護師の勤務時間数の割合として計算します。
計算例
その病棟で必要な看護師の勤務時間数(月延べ勤務時間数)が2400時間だった場合で、ある病棟の看護師の人数と月の勤務時間数を下の状態とします。
看護スタッフ | その月の勤務時間数 |
正看護師(A) | 172 |
正看護師(B) | 177 |
正看護師(C) | 175 |
正看護師(D) | 175 |
正看護師(E) | 165 |
正看護師(F) | 173 |
正看護師(G) | 160 |
正看護師(H) | 158 |
正看護師(I) | 145 |
正看護師(J) | 166 |
正看護師(K) | 176 |
正看護師(L) | 172 |
准看護師(a) | 168 |
准看護師(b) | 167 |
准看護師(c) | 154 |
准看護師(d) | 168 |
准看護師(e) | 166 |
准看護師(f) | 176 |
正看護師の総勤務時間数 | 2014 |
准看護師の総勤務時間数 | 999 |
病棟の看護師の総勤務時間数 | 3013 |
正しい計算方法:勤務時間数で看護師比率を計算
看護師比率 = 正看護師の勤務時間数 ÷ 病棟に必要な看護職員の勤務時間数 × 100
この計算式に下の値を当てはめます。
- 正看護師の勤務時間数 2014時間
- 全体の勤務時間数 2400時間
看護師比率 = 2014 ÷ 2400 × 100 ≒ 83.9%
誤った計算方法①:人数で看護師比率を計算
誤って看護師の人数の比率で看護師比率を計算してしまった場合には、
(誤り)看護師比率 = 正看護師の人数 ÷ 病棟にいるすべての看護師の人数 × 100
- 正看護師の人数 12人
- 全体の人数 18人
(誤り)看護師比率 = 12 ÷ 18 × 100 ≒ 66.6%
誤った計算方法②:全ての勤務時間数を用いて看護師比率を計算
誤ってその月に必要な病棟の看護職員の勤務時間数を、病棟に所属する全ての看護師の勤務時間数で看護師比率を計算してしまった場合には、
看護師比率 = 正看護師の勤務時間数 ÷ 病棟に全ての看護職員の勤務時間数 × 100
- 正看護師の勤務時間数 2014時間
- 全体の勤務時間数 3013時間
(誤り)看護師比率 = 2014 ÷ 3013 × 100 ≒ 66.8%