施設基準

療養病棟入院基本料(R6.5.31まで)

クワホピ

療養病棟入院基本料は、医療療養病床において算定される入院基本料です。

この記事では、療養病棟入院基本料についての概要を可能な限り詳細に解説していきます。

記事の内容については、医科点数表の解釈(R4年4月版)に沿ったものになりますので、参考として読んで頂ければと思います。

令和6年6月1日以降の療養病棟入院基本料については以下の記事を参照ください。

療養病棟入院基本料(R6.6.1~)
療養病棟入院基本料(R6.6.1~)

医科点数表の解釈(R4年4月版)の療養病棟入院基本料

医科点数表の解釈(R4年4月版)の療養病棟入院基本料は、以下のように記載されています。

療養病棟入院基本料1

※(   )は生活療養を受けている患者の場合

医療区分1医療区分2医療区分3
ADL3
968点
(953点)

1,414点
(1,399点)

1,813点
(1,798点)
ADL2
920点
(905点)

1,386点
(1,372点)

1,758点
(1,744点)
ADL1
815点
(801点)

1,232点
(1,217点)

1,471点
(1,457点)

療養病棟入院基本料2

※(   )は生活療養を受けている患者の場合

医療区分1医療区分2医療区分3
ADL3
903点
(889点)

1,349点
(1,335点)

1,748点
(1,734点)
ADL2
855点
(841点)

1,322点
(1,307点)

1,694点
(1,680点)
ADL1
751点
(736点)

1,167点
(1,153点)

1,406点
(1,392点)

療養病棟入院基本料の概要

入院基本料は、入院の際に行われる基本的な医学管理、看護、療養環境の提供を含む一連の費用を評価したもので、1日の入院費用(ベッド代)に該当します。

なお、検査や食事などにかかる費用はベッド代には含まれないため、別の費用として請求されます。

9段階に分類される療養病棟入院基本料

医療療養病床に入院されている患者様は、医療の必要度を3段階で表した医療区分と、介護の必要度を3段階で表したADL区分によって評価されます。

医療区分は「医療区分1・医療区分2・医療区分3」で分類され、医療区分3になるほど医療必要度が高く、ADL区分は「ADL区分1・ADL区分2・ADL区分3」で分類され、ADL区分3になるほど介護必要度が高くなります。

医療の必要度低い高い
医療区分医療区分1医療区分2医療区分3
介護の必要度低い高い
ADL区分ADL区分1ADL区分2ADL区分3

療養病棟入院基本料は、この医療区分とADL区分を組み合わせた9段階で分類され、医療の必要度・介護の必要度が高い患者様ほど入院基本料も高くなるようになっています。

医療区分1
医療区分2
医療区分3
ADL区分3入院基本料G
医療区分1
ADL区分3
入院基本料D
医療区分2
ADL区分3
入院基本料A
医療区分3
ADL区分3
ADL区分2入院基本料H
医療区分1
ADL区分2
入院基本料E
医療区分2
ADL区分2
入院基本料B
医療区分3
ADL区分2
ADL区分1入院基本料I
医療区分1
ADL区分1
入院基本料F
医療区分2
ADL区分1
入院基本料C
医療区分3
ADL区分1
入院基本料が低い 入院基本料が高い
入院基本料I
医療区分1
ADL区分1
入院基本料A
医療区分3
ADL区分3

医療区分1・ADL区分1の組み合わせの入院基本料よりも、医療区分3・ADL区分3の組み合わせの入院基本料の方が入院基本料は高くなります。

合わせて読みたい
医療療養病床への「医療区分・ADL区分」の導入と療養病棟入院基本料
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「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の具体的な評価項目
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療養病棟入院基本料1と療養病棟入院基本料2の違い

療養病棟入院基本料には「療養病棟入院基本料1」と「療養病棟入院基本料2」の2つがありますが、医療機関が厚生局へ届け出ている入院基本料を算定することになります。

どちらの入院基本料を届け出るかは医療機関で決めることができますが、定められている施設基準を満たす必要があります。

入院患者様の医療区分2・3の割合

2つの療養病棟入院基本料の満たすべき施設基準はほとんどの項目で同じですが、「入院患者様の医療区分2・3の割合」の項目だけ異なっています。

療養病棟入院基本料の医療区分に関する施設基準

療養病棟入院基本料1:医療区分2・3の割合80%以上

療養病棟入院基本料2:医療区分2・3の割合50%以上

医療区分は患者様の医療必要度を評価したものなので、医療区分2・3の割合が高く設定されている療養病棟入院基本料1の方が医療必要度の高い患者様が多く入院されていることになります。

療養病棟入院基本料1と療養病棟入院基本料2を比較すると、療養病棟入院基本料1の方が高い点数になっているのはそのためです。

「生活療養」を受けている患者

療養病棟入院基本料では「生活療養を受けている患者の場合」には入院基本料が若干異なります(赤文字)。

医療区分1医療区分2医療区分3
ADL3
968点
(953点)

1,414点
(1,399点)

1,813点
(1,798点)
ADL2
920点
(905点)

1,386点
(1,372点)

1,758点
(1,744点)
ADL1
815点
(801点)

1,232点
(1,217点)

1,471点
(1,457点)

この生活療養ですが以下のように定められています。

健康保険法第63条第2項第2号、及び高齢者医療確保法第64条第2項第2号の療養

生活療養とは「健康保険法第63条第2項第2号」と「高齢者医療確保法第64条第2項第2号の療養」ということみたいですが、分かりづらいので内容をまとめました。

健康保険法 第63条第2項第2号

次に掲げる療養であって前項第5号に掲げる療養と併せて行うもの(特定長期入院被保険者に係るものに限る。以下「生活療養」という。)

  • イ 食事の提供である療養
  • ロ 温度、照明及び給水に関する適切な療養環境の形成である療養
前項第5号 ⇒ 第63条第1項第5号

病院、又は診療所への入院、及びその療養に伴う世話、その他の看護

特定長期入院被保険者

療養病床に長期入院する65歳以上の者のこと

要点

『健康保険法 第63条第2項第2号』とは、療養病床に長期入院する65歳以上の患者様に対して行う以下のもの。

  • 病院、または診療所への入院、及びその療養に伴う世話、その他の看護
  • 食事の提供である療養
  • 温度、照明、及び給水に関する適切な療養環境の形成である療養

高齢者医療確保法 第64条第2項第2号

高齢者医療確保法

(正式名称)

  • 高齢者の医療の確保に関する法律

(目的)

  • 国民の高齢期における適切な医療の確保を図るため、医療費の適正化を推進するための計画作成、及び保険者による健康診査などの実施に関する措置を講ずると共に、前期高齢者にかかる保険者間の費用負担の調整、後期高齢者に対する適切な医療の給付を行うために必要な制度を設け、もって国民保険の向上、及び高齢者福祉の増進を図ること

(対象)

  • 75歳以上の高齢者、65歳以上の障害者
第64条第2項第2号

次に掲げる療養であって前項第五号に掲げる療養(長期入院療養に限る。)と併せて行うもの(以下「生活療養」という。)

  • イ 食事の提供である療養
  • ロ 温度、照明、及び給水に関する適切な療養環境の形成である療養
前項第五号 ⇒ 第64条第1項第五号

病院、又は診療所への入院、及びその療養に伴う世話、その他の看護

要点

『高齢者医療確保法 第64条第2項第2号』とは、療養病床に長期入院する75歳以上の高齢者、65歳以上の障害者に対して行う以下のもの。

  • 病院、または診療所への入院、及びその療養に伴う世話、その他の看護
  • 食事の提供である療養
  • 温度、照明、及び給水に関する適切な療養環境の形成である療養

生活療養 全文

健康保険法、高齢者医療確保法についての文章の一部を以下に記載しました。文字色を変更している箇所が「生活療養」に関係している箇所になります。

生活療養(健康保険法第63条第2項第2号及び高齢者医療確保法第64条第2項第2号の療養) 

【健康保険法第63条第2項第2号(オレンジ色の文字)⇒(療養の給付)

第63条 被保険者の疾病又は負傷に関しては、次に掲げる療養の給付を行う。
一 診察
二 薬剤又は治療材料の支給
三 処置、手術その他の治療
四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護

 次に掲げる療養に係る給付は、前項の給付に含まれないものとする。
一 食事の提供である療養であって前項第5号に掲げる療養と併せて行うもの(医療法(昭和23年法律第205号)第7条第2項第4号に規定する療養病床(以下「療養病床」という。)への入院及びその療養に伴う世話その他の看護であって、当該療養を受ける際、65歳に達する日の属する月の翌月以後である被保険者(以下「特定長期入院被保険者」という。)に係るものを除く。以下「食事療養」という。)
二 次に掲げる療養であって前項第5号に掲げる療養と併せて行うもの(特定長期入院被保険者に係るものに限る。以下「生活療養」という。)
イ 食事の提供である療養
ロ 温度、照明及び給水に関する適切な療養環境の形成である療養


3 第1項の給付を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる病院若しくは診療所又は薬局のうち、自己の選定するものから受けるものとする。
一 厚生労働大臣の指定を受けた病院若しくは診療所(第65条の規定により病床の全部又は一部を除いて指定を受けたときは、その除外された病床を除く。以下「保険医療機関」という。)又は薬局(以下「保険薬局」という。)
二 特定の保険者が管掌する被保険者に対して診療又は調剤を行う病院若しくは診療所又は薬局であって、当該保険者が指定したもの
三 健康保険組合である保険者が開設する病院若しくは診療所又は薬局

特定長期入院被保険者

特定長期入院被保険者とは、療養病床に長期入院する65歳以上の者のこと

【高齢者医療確保法第64条第2項第2号(オレンジ色の部分)⇒(療養の給付)

第64条  後期高齢者医療広域連合は、被保険者の疾病又は負傷に関しては、次に掲げる療養の給付を行う。ただし、当該被保険者が被保険者資格証明書の交付を受けている間は、この限りでない。
一  診察
二  薬剤又は治療材料の支給
三  処置、手術その他の治療
四  居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五  病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護

  次に掲げる療養に係る給付は、前項の給付に含まれないものとする。
一  食事の提供である療養であつて前項第五号に掲げる療養(医療法第七条第二項第四号 に規定する療養病床への入院及びその療養に伴う世話その他の看護(以下「長期入院療養」という。)を除く。)と併せて行うもの(以下「食事療養」という。)
二  次に掲げる療養であつて前項第五号に掲げる療養(長期入院療養に限る。)と併せて行うもの(以下「生活療養」という。)
イ 食事の提供である療養
ロ 温度、照明及び給水に関する適切な療養環境の形成である療養

三  厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であつて、前項の給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養として厚生労働大臣が定めるもの(以下「評価療養」という。)
四  被保険者の選定に係る特別の病室の提供その他の厚生労働大臣が定める療養(以下「選定療養」という。)

3  被保険者が第一項の給付を受けようとするときは、自己の選定する保険医療機関等に被保険者証を提出して受けるものとする。ただし、厚生労働省令で定める場合に該当するときは、被保険者証を提出することを要しない。

療養病棟入院基本料|まとめ

療養病棟入院基本料は、医療療養病床を掲げている医療機関において算定される入院基本料で、患者様の医療区分とADL区分によって9段階に分類されます。

療養病棟入院基本料1と療養病棟入院基本料2の2つがあり、それぞれ施設基準を満たし厚生局へ届け出ることで算定することができ、医療必要度の高い患者様を多く入院させる必要がある療養病棟入院基本料1の方が高い点数を算定できるようになっています。

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