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医療療養病床における「褥瘡対策加算」

クワホピ

医療療養病床において褥瘡対策を行った場合には、褥瘡の状態に合わせて加算が可能です。今回は、「褥瘡対策加算」について解説していきます。

医療療養病床において、褥瘡対策が必要な患者にその状態に応じて褥瘡対策を行った場合には、入院基本料とは別に「褥瘡対策加算」を算定できます。

加算は褥瘡対策加算1(15点)と褥瘡対策加算2(5点)があり、患者様のADL区分の状態及び褥瘡の状態によっていずれかを算定することになります。

どのような状態のときに褥瘡対策加算を算定し、どのような褥瘡の評価が必要なのかをしっかり確認しておきましょう。

医科点数表の解釈への記載内容とその要点

褥瘡対策加算については医科点数表の解釈へ以下のように記載されています。

(注4)

当該病棟に入院している患者のうち、別に厚生労働大臣が定める状態のものに対して、必要な褥瘡対策を行った場合に、患者の褥瘡の状態に応じて、1日につき次に掲げる点数を所定点数に加算する。

  • イ 褥瘡対策加算1 15点
  • ロ 褥瘡対策加算2 5点

(注記)

「注4」に規定する褥瘡対策加算1及び2は、ADL区分3の状態の患者について、「別紙様式46」の「褥瘡対策に関する評価」を用いて褥瘡の状態を確認し、治療及びケアの内容を踏まえ毎日評価し、以下により算定する。

なお、以下において、「褥瘡対策に関する評価」における褥瘡の状態の評価項目のうち「深さ」の項目の点数は加えない当該患者のDESIGN-Rの合計点数を「DESIGN-Rの合計点」といい、暦月内におけるDESIGN-Rの合計点が最も低かった日の点数を当該月における「実績点」という。

また、褥瘡の状態の評価の結果を「別添1の2」の「別紙様式2」の「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の所定欄に記載し、治療及び看護の計画を見直した場合には、その内容を診療録等に記載する。

なお、特別入院基本料等を算定する場合は、当該加算は算定できない。

  • ア 褥瘡対策加算1については、入院後若しくは新たに当該加算に係る評価を始めて暦月で3月を超えない間又は褥瘡対策加算2を算定する日以外の日において算定する。
  • イ 褥瘡対策加算2については、直近2月の実績点が2月連続して前月の実績点を上回った場合であって、DESIGN-Rの合計点が前月の実績点より上回った日に算定する。

褥瘡対策加算の要点

医科点数表の解釈に記載されている褥瘡対策加算についての部分の要点を箇条書きにしました。

  • ADL区分3の状態の患者を算定する。
  • 「別紙様式46」の「褥瘡対策に関する評価」を用いて褥瘡の状態を確認する。
  • 褥瘡に対する治療およびケアの内容を踏まえ毎日評価をする。
  • 褥瘡の評価には「DESIGN-R」を用い、その月の「DESIGN-Rの合計点」が一番低いものを「実績点」として用いる。
  • 褥瘡の評価の結果は「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記載する。
  • 褥瘡に対する治療・看護計画の見直しは診療録等に記載する。
  • 特別入院基本料等を算定する場合には算定できない。
  • 褥瘡対策加算1は、入院後、または新しく褥瘡対策加算の評価を始めて暦月で3月を超えない間に算定し、褥瘡対策加算2を算定する日以外も褥瘡対策加算1になる。
  • 褥瘡対策加算2は、DESIGN-Rの実績点が2月連続して悪くなった場合に、その月の実績点が前月の実績点より悪くなった日に算定する。

褥瘡対策加算の算定(DESIGN-Rの評価)

褥瘡対策加算の算定にあたっては、まずDESIGN-Rを用いて褥瘡を評価し、その合計点と実績点を比較していきます。

DESIGN-R:褥瘡評価

「DESIGN-R」では、褥瘡を以下の項目で評価します。

深さ (Depth)

滲出液 (Exudate)

大きさ (Size)

炎症/感染 (Inflammation/Infection)

肉芽組織 (Granulation)

壊死組織 (Necrotic tissue)

ポケット (Poket)

それぞれの項目ごとに褥瘡の状態に合わせて点数化し、その合計点で評価をします。このとき、「深さ(Depth)」の項目の点数は合計点には加えないので注意が必要です。

DESIGN-R® 褥瘡評価

※1 深さ(Depth)の得点は合計点に含めない
※2 持続する発赤の場合も皮膚損傷に準じて評価する
※3 ”短径”とは、”長径と直交する最大径”である

Depth 深さ ※1

創内の一番深い部分で評価し、改善に伴い創底が浅くなった場合、これと相応の深さとして評価する

d0皮膚損傷・発赤なし
d1持続する発赤
d2真皮までの損傷
D3皮下組織までの損傷
D4皮下組織を超える損傷
D5関節腔、体腔に至る損傷
DU深さ判定が不能の場合

Exudate 滲出液

e0なし
e1少量:毎日のドレッシング交換を要しない
e3中等量:1日1回のドレッシング交換を要する
E6多量:1日2回以上のドレッシング交換を要する

Size 大きさ

皮膚損傷範囲を測定:[長径(㎝)×長径と直行する最大径(㎝)] ※2

s0皮膚損傷なし
s34未満
s64未満以上16未満
s816以上36未満
s936以上64未満
s1264以上100未満
S15100以上

Inflammation/Infection 炎症/感染

i0局所の炎症徴候なし
i1局所の炎症徴候あり(創周囲の発赤、腫脹、熱感、疼痛)
i3局所の明らかな感染徴候あり(炎症徴候、膿、悪臭など)
I9全身的影響あり(発熱など)

Granulation 肉芽組織

g0治癒あるいは創が浅いため肉芽形成の評価ができない
g1良性肉芽が創面の90%以上を占める
g3良性肉芽が創面の50%以上90%未満を占める
G4良性肉芽が創面の10%以上50%未満を占める
G5良性肉芽が創面の10%未満を占める
G6良性肉芽が全く形成されていない

Necrotic tissue 壊死組織

混在している場合は全体的に多い病態をもって評価する

n0壊死組織なし
N3柔らかい壊死組織あり
N6硬く厚い密着した壊死組織あり

Poket ポケット

毎回同じ体位で、ポケット全周(潰瘍面も含め)[長径(㎝)×短径(㎝) ※3]から潰瘍の大きさを差し引いたもの

p0ポケットなし
P64未満
P94未満以上16未満
P1216以上36未満
P2436以上

褥瘡対策加算の算定例

褥瘡対策加算の算定は、褥瘡の状態に合わせて加算が変更するようになっていて、褥瘡の状態が悪化することが継続すると「褥瘡対策加算2」の算定になるようになっています。

褥瘡対策加算1
●入院して3か月間
●新しく褥瘡対策加算の評価を始めて3か月間
●褥瘡対策加算2を算定する日以外
褥瘡対策加算2
直近2ヵ月の実績点が連続して前月を上回ったときに、前月の実績点より上回った日に算定する。
※直近2ヵ月の実績点が連続して前月を上回ったときには、毎日「褥瘡対策加算1」と「褥瘡対策加算2」の切り替えを行う必要があります。

褥瘡対策加算の例:入院日が「7/10」の場合

日付ADL区分DESIGN-R評価褥瘡対策加算
7/10ADL区分31点加算1
8/10ADL区分32点前月より悪化加算1
9/10ADL区分33点前月より悪化
(実績点)
加算1
10/10ADL区分33点実績点と同じ加算1
10/11ADL区分34点実績点より悪化加算2
10/12ADL区分33点実績点と同じ加算1

9月の実績点が「3点」なので、10月はその実績点と比較する。

10/10は、DESIGN-Rの合計点が3点で、9月の実績点と同じなので褥瘡対策加算1を算定する。

10/11は、DESIGN-Rの合計点が4点で、9月の実績点より悪化しているので褥瘡対策加算2を算定する。

10/12は、DESIGN-Rの合計点が3点で、9月の実績点と同じなので褥瘡対策加算1を算定する。

褥瘡の評価についての疑問:医科点数表の解釈(事務連絡)

褥瘡対策加算については、毎日評価が必要だが褥瘡の治療方法によっては評価ができない場合や褥瘡が複数ある場合の対応などがあります。

そのような場合にはどのような算定になるのでしょうか?

このことに関しては、「医科点数表の解釈:事務連絡」において以下のように記載されています。

[問]

褥瘡対策加算については、毎日評価が必要だが、

  1. 治療上、交換を要しない創傷被覆材を用いた際、褥瘡の状態が毎日評価できないが、評価はどのように行えばよいか?
  2. 褥瘡が複数箇所ある場合、それぞれの褥瘡の評価の点数は合算すればよいか?

[答]

  1. 治療の必要から褥瘡を創傷被覆材で覆い、1日のうちに状態が確認できない場合、創傷被覆材を用いている間の評価は、創傷被覆材を用いる直前の状態等、直近で確認した際の状態で評価すること。また、確認できない旨について、診療録等に記載すること。
  2. 複数の褥瘡がある場合は、重症度の高い褥瘡の点数を用いること。

褥瘡対策加算の評価票など

DESIGN-Rの評価にあたり、毎日の評価と過去3ヵ月の実績点を記入できる評価票を作成しましたのでご利用ください。

医療療養病床における『褥瘡対策加算』

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