【新型コロナウイルス感染症通信[Vol.10]】感染症診断の原則
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 微生物学分野 教授 西順一郎先生がされている「新型コロナウイルス感染症通信」が、とても参考になったので引用し記載させて頂きました。
≪感染症診療の原則≫
すべての患者はかぜなどの感染症に罹るため、一般外来だけでなくあらゆる専門外来で、感染症患者を診ていることと思います。すでに多くの医師が日常的に実施しているとおり、感染症診療は次の 5 つを原則とします。
①患者の状態を評価する、②感染臓器を想定する、③原因病原体を推定する、④適切な微生物検査を行う、⑤必要に応じて抗微生物薬を投与し経過をみる。とくに②と③はよく抜け落ちますので、意識化することが重要です。
現在、検査至上主義の風潮が国民のあいだに広がり、COVID-19の出現以来その傾向がさらに極端になっています。感染症の検査は、医師が患者や公衆衛生の利益を考えて選択して実施するものです。また、検査結果だけでなく、流行状況や問診・診察所見をふまえて総合的に診断する必要があります。「病気を診断するのは検査ではなく医師である」という当たり前のことをあらためて確認する必要があるように思います。
鹿県医FAXニュース(2020.10.16)
要約&不明語句
感染症診断の原則
すべての患者は、風邪などの感染症にかかるため、一般外来だけでなくあらゆる専門外来で感染症患者を診ていることと思います。
すでに多くの医師が日常的に実施しているとおり、感染症診療は次の5つを原則とし、とくに②・③はよく抜け落ちるので意識化することが重要です。
- 患者の状態を把握する
- 感染臓器を想定する
- 原因病原体を推定する
- 適切な微生物検査を行う
- 必要に応じて抗微生物薬を投与し経過をみる
現在、検査至上主義の風潮が国民のあいだに広がり、新型コロナウイルスの出現以来、その傾向がさらに極端になっています。
感染症の検査は、医師が患者や公衆衛生の利益を考えて選択して実施するものです。
また、検査結果だけでなく、流行状況や問診・診察所見を踏まえて総合的に診断する必要があります。
「病気を診断するのは検査ではなく医師である」という当たり前のことをあらためて確認する必要があるように思います。
私たちの身の回りには、細菌、真菌(かび)、ウイルス、寄生虫などの微生物がたくさん存在します。
例ば、腸の中には、兆の単位で細菌や真菌が住んでいます。
彼らは普段は病気を起こすことなく、むしろ食べ物の消化吸収を手伝うなどして、人間と共存共栄しています。
ところが、何かの拍子に腸を飛び出して、本来微生物がいないはずの別の臓器(肝臓、胆嚢、腎臓など)に侵入して、悪影響をおよぼすことがあります。
すると人体は、これを追い出すために、様々な反応を起こします。
これらの結果、熱が出たり、臓器にもよりますが、腫れや痛みのような症状が出ます。
このようにして、微生物が原因となって起こる病気が「感染症」です。
主に尿・喀痰・糞便など全身から採取された検体から感染症の原因となる微生物を見つけ出す検査